<行財政運営>
■ 「選択と集中」で、財政運営にメリハリを。
市川市の財政は、市税収入が堅実で、いざという時のための貯金(財政調整基金)は県内最大、借金(市債)も少なくて健全だといわれます。
しかし、行政が抱えている課題は数多くあります。コロナ禍、少子高齢社会、地球温暖化など、これまでの暮らしが少しずつ変わり始め、災害対策、介護サービス、環境・エネルギーなどさまざまな場面で行政の対応が求められています。
「選択と集中」とは、行政がお金を使うべきところを見極めて、使うべきところには他から回してでも必要なだけのお金をつぎ込むことです。市民サービス向上のためといっても、漫然とお金を使っていればムダが生じます。政策に優先順位をつけるに当たり、効率性の観点も生きたお金の使い方に必要です。
まずは、コロナ禍を最小限に食い止めること。保健医療体制の充実と市内経済の立て直しで日々の暮らしに安心を取り戻すことを最優先で取り組みます。そして、安心を豊かさに引き上げるため、福祉は子育てから介護まで、地域を軸に切れ目のない施策を展開します。豊かさを次の世代に引き継ぐため、環境にやさしい持続可能なまちづくりの道筋をつけます。一方で、デジタル技術を活用して行政事務のコスト削減を図り、次の一手のための財源を確保します。
令和4年度予算は1,668億円と前年度を上回る規模ですが、経常収支比率は94.2%、つまり、将来をよくする投資にかけられるお金は多くはありません。ムダを排して生きたお金を正しく使うことを、今まで以上に意識しなければなりません。
■ 公共施設のマネジメント計画に、将来に向けた戦略を盛り込みます。
少子高齢化と人口減少に伴う税収減と義務的経費の増により、自治体の財政運営が厳しさを増す中、老朽化が進む公共施設の維持管理は全国的な課題です。市川市も公共施設等総合管理計画を策定し、建物の長寿命化や施設配置の適正化を進めることで、建て替えなどによる財政負担の平準化を図っています。
計画を着実に実行していくことはもちろん大切ですが、経費縮減の中にも戦略的なメリハリを持たせ、市民の利便性を高めていくことが必要です。例えば、世代を越えて市民が集う場をつくり、地域に人のつながりを生み出すための施設を整備し、市役所の証明業務やさまざまな分野の相談窓口を集約して設置することが考えられます。
未来の市民が便利だと思えるよう、ビジョンをしっかりと描きながら、公共施設の再整備も進めていく必要があります。
□ 市長の退職金CUT。身を切る改革を進めます。
□ 市役所の調達は市内業者を基本とする。
□ タウンミーティングの開催
<防災・防犯>
■ 防災拠点や避難所に水・トイレ・非常用電源を確保し、「発災後72時間」を乗り切る万全の体制を構築します。
災害から命を守れるかどうかは、発災から「72時間」が分岐点といわれます。市民の命を守るため、この最初の3日間で行政がやるべきことは、一時避難所を速やかに開設し、水とトイレ、それと電源の確保です。水は命を守るのに不可欠ですし、きちんとしたトイレの確保は、衛生環境の維持に加え、プライバシーが守られた空間を確実に用意することも含みます。電源は情報収集に便利なスマートフォンなどを充電するほか、医療機器を稼動させるのにも必要です。
こうした備えによって、被災した市民が「72時間」を乗り切り、復興への希望と意欲を抱けるよう、万全な体制を構築するのが行政の務めです。
■ バリアフリーやプライバシー、心のケアに配慮した「避難生活のあるべき姿」を追求します。
災害時の避難生活では、怖い思いをした後に狭い場所で不便な生活を強いられる避難者の心のケアも重要です。いつ起こるかもしれない災害への備えとして、少しでも安心できる避難所を目指す必要があります。
私たちは、地震や水害に遭った全国の被災地から、さまざまなことを学ばなければなりません。また、男性と女性、子どもやお年寄り、障がいや基礎疾患のある人や、医療・介助などに携わる人など、それぞれの立場でのニーズを把握して、ひとつずつ解決を図っていくことも大切です。避難生活の中でも、バリアフリーを取り込み、プライバシーに配慮して、できる限り心を癒すための要素を盛り込めるよう、行政も丁寧に考えていかなければなりません。
ひとまずの安心感を持つことで、生活を立て直す意欲が生まれる。避難所にはそんな機能も求められていると思います。
■ 要支援者避難リストと福祉避難所の整備を進め、誰も取り残さない避難体制を構築します。
要支援者避難リストは、高齢者や障がい者など、災害時の避難にサポートを必要とする方の名簿です。これら災害弱者と呼ばれる方に対するサポートは、移動の手助けだけでなく、いつどこに避難すべきか、避難情報に基づいて判断することも含まれます。避難の前の段階からサポートに入ることが必要です。
リストに名前を載せることについては、健康や身体の状況などのセンシティブな情報を他人に知られてしまうリスクを感じている方もいらっしゃると思います。こうした不安を解消してもらうため、どんな手助けが必要かを考える基礎としてリストの整備が有用となることをより多くの人に理解していただけるよう、啓発に努めます。また、要支援者の方が安心して避難できるよう、バリアフリーなど必要な機能を備えた福祉避難所を用意します。この2つのセーフティネットで、誰も取り残さない避難体制をつくります。
■ 住宅・建物の耐震化や浸水防止、市内に散在する土砂災害危険個所について、安全対策を進めます。
近年は全国的に大きな地震や「50年に一度」の大雨に見舞われることが増えているように思います。地震や大雨に強いまちづくりを進めるに当たり、住宅や建物の耐震化、浸水防止対策は、市民の命を守る直接的な取り組みです。市内には55か所の土砂災害警戒区域が指定されていますが、崖地の崩落防止は近隣住民の安全のほか、避難経路の確保のためにも不可欠です。道路冠水などの浸水被害対策も同様に必要です。
災害に強いまちをつくるため、家屋の耐震化・浸水防止対策に対する助成を進めるほか、崖地の安全対策にも速やかに取り組んでいきます。
□ 台風・大雨による内水氾濫の防止
<まちづくり>
■ 空き地・空き家対策を推進し、土地や物件の利活用を図ります。
高齢化が進み、管理不全となる空き地や空き家は増える傾向にあります。都市部の空き家に管理が行き渡らなくなると、防犯や衛生面などで周囲の住環境にも悪い影響が及びます。空き地や空き家の利活用は、地域全体の価値にかかわる重要なテーマです。
都市部の利便性が高い場所に生じた空き地や空き家は、緑を守り、人が行き交う空間として、地域活性化と環境保全の両立を目指した活用を考えるべきと思います。ふらっと立ち寄れる憩いの場、サークル活動や地域ボランティア、ピアカウンセリングの場所としても活用できるでしょう。土地建物の所有者と協力して、地域の「お荷物」だった空き地や空き家を地域のにぎわいの拠点に生まれ変わらせるような活用制度を構築していきます。
■ 秩序ある住宅地の形成と都市緑地の保全の両立を図ります。
市内の土地利用に関する基本的なエリア分けに、市街化区域と市街化調整区域があります。市街化調整区域は、農地や緑地などを現状のまま保つエリアで、住宅など建物を建てるには原則として県知事の許可が必要です。
いわゆる「50戸連たん」は、市街化調整区域で宅地開発を行う代表的な方法ですが、これがバラバラに進んでしまうと、市域全体として区画がまちまちとなり、結果的に、住みにくいまちとなるおそれがあります。市川市全体で秩序あるまちづくりを進めるには、市街化区域と市街化調整区域の「線引き」から見直して、住宅と緑地・農地をバランスよく組み合わせることが必要です。
他方、市街化区域の側には、緑がある地区を市が生産緑地に指定し、農地を保全する仕組みがあります。生産緑地は農地並みの課税となり、農地として維持されます。
もともと生産緑地は、1992年に始まった制度で、これに指定されると30年間はそこを農地として利用することが義務づけられました。30年が過ぎた後は自治体に買取りを申し出ることができますが、自治体が買い取らなかったり、農地として他の農家に引き継がれなければ、生産緑地の指定が解除されます。
今年は2022年、生産緑地の指定から30年が経つ最初の年に当たります。買取りの申し出があった土地は、まちづくりの計画に照らして活用を考える必要があります。
東京都に隣接し、利便性が高いという立地条件は、市川市にとって最大のセールスポイントといえます。整然としたまち並みと緑が両立する心地よいまちづくりを進め、市川市の魅力をさらに高め、選ばれるまちにしていきます。
■ 駅前再開発では、まちのデザインを関係者で共有し、最適解を導けるよう注力します。
令和元年8月に策定された本八幡駅北口再開発基本構想は、再開発が完了した地区の道路を挟んで東側を対象としたものです。建物が密集し、道路が狭いこの地区を再編し、防災性を高め、快適でゆとりある空間の充実を図るとしています。
現在はこの基本構想に基づき、地権者、事業者、行政が協働して、街づくりの具体的な計画の検討に入っています。JR、京成、都営地下鉄の3線が入る交通至便の貴重な区域に、市としても市民にとって不可欠な施設を整備したいところです。多様なニーズを受け止め、活気にあふれるまちを目指して、最適解を導き出せるよう注力していきます。
■(仮称)押切橋・大洲橋の早期開通を働きかけ、地域の利便性向上と連携強化を図ります。
行徳駅入口交差点から江戸川区の柴又街道につながる(仮称)押切橋の事業計画がようやく動き出しました。事業期間は2031年度までとされています。
行徳地域と江戸川区を結ぶ旧江戸川の橋は、現在、広尾防災公園の脇にかかる今井橋の1つしかありません。今井橋の上流にある一般道路の橋は国道14号の市川橋、この間の8kmは首都圏の人口集中地区では最長の間隔です。ここに橋がかかることで、対岸へのアクセスが複線となり、今井橋に集中していた交通混雑の緩和や、行徳地域と江戸川区との行き来の活発化も期待できます。1日も早い開通に向けて県に働きかけていきます。
もう1つ、江戸川の架橋が待たれているのが(仮称)大洲橋です。江戸川の架橋は市川市の防災機能の観点からも重要なテーマです。こちらも早期の事業化に向け、県に強く要望していきます。
■ 道路の無電柱化を進め、人にやさしい街並みをつくります。
景観法の施行から20年あまり、景観まちづくりの考え方もかなり一般的になってきたせいか、市川市内も含めて、道路の無電柱化が少しずつ広がってきたように感じます。
無電柱化のメリットは、まちの景観がよくなるだけではありません。道路上の大きな障害物がなくなり、人や車にとって通行の安全性が上がります。バリアフリーの観点からも効果があります。
また、無電柱化は防災の面でも有効です。阪神・淡路大震災では、切れて垂れ下がった電線が火災を引き起こしたほか、救急や消防活動にも支障をきたしたといいます。電線などのケーブルが地下に入ることで、電気や電話などの社会インフラが災害にも強くなります。
安全・安心のまちづくりにとって、無電柱化は大きな効果をもたらします。着実に、その分、市川のまちの魅力は確実に高まります。
□ 地域で偏りのない公園・緑地の整備
■ 市内でお金を循環させ、地域経済の活性化と市の財源安定の両立を図ります。
市民の中には、東京などの市外で働いている方が多くいらっしゃいます。市川市の税収のうち、およそ半分は個人市民税が占めていますから、市の財政の中には、市外から入ってきたお金が結構あると言ってもいいでしょう。
経済では、お金は血液のようなもの。経済を活性化する方法の1つは、動くお金の量を増やすことです。市の税金をできる限り市内で使うようにすれば、経済の活性化につながるだけでなく、その先には市内の事業者から税金として市に戻ってくるという循環があり、市の財政の安定にも貢献することになります。
市内でお金を循環させる施策を通じて、まちの活力を引き出します。
■ Wi-Fiスポット(公衆無線LAN)を市内全域に整備します。
スマートフォンの普及が進み、多くの市民がモバイル端末を使って情報に触れる時代、無線通信環境も重要なインフラの1つです。市川市も市役所、公民館、地域ふれあい館など多くの公共施設に「市川市フリーWi-Fi」を整備してきました。今後さらに整備を加速し、公共施設のみならず市域全体にWi-Fiスポットを広げることが必要です。
市がWi-Fiスポットを整備する大きな理由のひとつは、災害時の情報提供手段を確保することです。無線通信自体はすでに携帯電話会社の各回線が張り巡らされていますが、これまでの大きな災害では、携帯電話やインターネットがつながらないことがしばしば起きています。この時、市のWi-Fiスポットの災害時用の通信回線をあてがえば、避難や被害に関する情報を継続的に提供することができますし、被災者同士の安否確認も安定的に行えます。平時は市からの情報発信ツール、音声案内などバリアフリーの活用が考えられます。
他の通信事業者と連携協力して、まずはすべての市の施設に、さらに人が集まる施設や区域にWi-Fiスポットを順次整備します。
<保健・福祉>
■ 感染症から市民を守るため、予防接種の費用助成を拡大します。
新型コロナウイルスの感染拡大で、ワクチン接種の重要性が改めて認識されてきたと思います。大きな病気をしないよう、生まれてから数年の間に、子どもは何種類もの予防接種を計画的に行うことになっていますが、母子健康手帳を片手に今度はいつ何のワクチンを、と考えるのもなかなか大変なことです。
市民のいのちを守るため、かかりつけ医をつくり、必要な予防接種をしっかりと受けられるような環境を整える必要があります。とりわけ予防接種は、病気にかかり医師にかかる確率を下げる意味で効果的な手段のひとつです。特に子育て世帯に対しては、法定・任意にかかわらず、予防接種の種類や接種時期、副反応など安全性に関することなど、正しい情報に基づいて適切に接種を受けられるよう、費用助成を含めて家族をしっかりサポートする必要があります。
コロナ禍を経て、私たちは感染症の猛威が社会そのものを機能不全にする危険があることを突きつけられました。日常生活を守るためにも、予防接種がさらに身近なものとなるよう、接種機会を拡大します。
■ 認知症に対する理解を深め、認知症予防を推進します。
高齢社会が進み、加齢とともに増える認知症患者数は、2025年には65歳以上の高齢者の5人に1人に達するといわれています。2025年は団塊の世代が75歳、後期高齢者になり始める時期でもあります。認知症支援と認知症予防はまさに喫緊の課題です。
市川市でも、認知症サポーターの養成や認知症ガイドブックなど、認知症に対する啓発を進めていますが、認知症の予防にも本格的に取り組む必要があります。
年のせい、と自覚しにくいともいわれる認知症、まずは病気なのかどうか、自分自身の状態を知ることが大切です。横浜市やさいたま市、練馬区など「もの忘れ検診」(簡易検査)を無料で実施している自治体もあります。
また、認知症の予防に取り組むことも必要です。適度な運動や栄養バランスの取れた食事、地域活動などの社会参加は、認知症の予防にも一定の効果があるといわれています。フレイル予防に認知症予防の要素も取り込んで、無料検査と予防指導の両面から、高齢者の心身の健康づくりを進めます。
□ 介護予防・フレイル対策の充実強化
□ 生活習慣・栄養指導による基礎体力・免疫力の向上
□ 健康マイレージの普及促進
□ ジェネリック医薬品の普及促進
■ 在宅医療や介護の資源確保に取り組みます。
「老老介護」という言葉があります。高齢化が進み、在宅の介護をする側も高齢者だという状況です。特養ホームやグループホーム整備が需要に追いつかず、介護の負担が家族に大きくのしかかっています。在宅介護の環境改善は喫緊の課題です。
在宅介護を充実させるには、介護人材の確保が不可欠です。介護ロボットなどICTの活用も一つの手段ですが、その人にあった介護メニューを組み立てるにはやはり人のチカラが必要です。国も介護人材の処遇改善を進めていますが、生計を立てる職業としては他の産業に大きく後れをとっている状況です。特に福祉を志す若い人にとって、介護のしごとを経済的にも魅力あるものにしなければなりません。
介護関係の資格取得に向けた助成のほか、介護職員に直接行き渡る人件費補助を市独自で上乗せ制度など、介護する側、される側の双方が安心できる体制を目指します。
■ 地域包括ケアシステムを発展させ、地域に重層的な相談支援体制を構築します。
市内には現在、15か所の高齢者サポートセンター(地域包括支援センター)があります。高齢者の介護予防や市が実施する介護サービス、権利擁護などさまざまな相談を受けています。地域包括ケアシステムは在宅医療の推進や医療と介護の連携促進を目的とするもので、市川市でも徐々に整備が進んできています。
一方、地域にはさまざまな世代や境遇にある方が暮らしています。子育てに関すること、障がいに関すること、生活困窮に関することなど、悩みごともさまざま。これらが複合的に生じていることも少なくありません。
重層的な相談支援体制は、こうしたさまざまな悩みに対し、時には個別に、時には連携して相談に応じ、解決を図ろうとする仕組みです。令和2年の改正社会福祉法は、「地域共生社会」の実現を図るため、分野横断的な相談体制の整備を進めることを自治体に投げかけています。身近なところにワンストップで対応できる相談窓口の整備を進め、地域で暮らしていくための安心感につなげていきます。
■ シルバーパスを導入し、お年寄りの外出をサポートします。
お年寄りが外に出て活動するには、公共交通機関を利用しやすくすることも重要です。自宅近くから駅や公共施設、買い物や病院などに出かけるのに身近な存在のひとつはバスですが、乗る人が少なければ運行本数が減り、それが利用者離れを加速させるという悪循環に陥りがちです。
そこで、検討を進めたいのがオンデマンド交通です。シルバーパスを導入して経済的な負担を軽くすることと合わせて、お年寄りの外出を支え、コミュニティバスと合わせ、地域の交通ネットワークを確保、地域の活力の基盤を整えます。
■ 障がい者・高齢者等の就労を支援し、自己実現と社会参加を後押しします。
東京パラリンピック2020では、様々な障がいをもつパラアスリートたちが躍動していました。今年の北京冬季パラリンピックでも、選手たちの努力の成果が存分に披露されるはずです。中でも、競技を終えた後の選手たちが、抱えている障がいを共に乗り越え、たたえ合う姿はとてもまぶしく映ります。自己実現とは、生きがいをもって日々を過ごしていくことそのものなのだと改めて感じます。
世界は今、インクルーシブ(包摂)に向けてかじを切っています。障がい者や高齢者に対する就労支援は、1人ひとりの生きがいを大切にする取り組みです。それには周囲の人たちの意識の変革も求められます。インクルーシブ社会の実現に取り組む事業者を応援し、チャレンジする障がい者・高齢者の自己実現を支えます。
□ 市内教育機関と連携した学び直しの場の提供
□ 世代を越えて交流できる地域拠点の整備
<こども・教育>
■「幼保・小・中」をクロスフェード化する取り組みを進め、ギャップの解消に努めます。
小中一貫教育への取り組みが全国で進められています。文部科学省の実態調査では、子どもたちの不安が解消され、学習や生活態度が好転したといった「中1ギャップ」を低減する効果が認められたとされています。
市川市では塩浜学園が義務教育学校として小中一貫教育をスタートさせました。今後さらに小中一貫校を増やしていくのに必要なのは、小・中学校の先生方が協力しやすい体制を整えることです。塩浜学園の経験に基づき、教育委員会が学校現場をしっかりサポートする仕組みを構築し、小中のギャップ解消に取り組みます。
子どもや親が直面する「ギャップ」は、幼稚園・保育園と小学校との間にもあります。ここにも、幼保・小の先生方の相互協力・連携が必要となるでしょう。ギャップの原因を究明し、解消策を模索しながら、切れ目のない体制整備を目指します。
■ 駅前などに、親子で交流を深められる「子育てステーション」を設置します。
子育て世代は同時に働く世代でもあります。仕事と子育てを両立する彼らのライフサイクルに着目すると、保育園や子育て支援施設は駅前からアプローチできるのが便利です。子育て世代が多く転入する流山市では、主要駅に送迎保育ステーションを設置し、自宅から遠い保育園への送迎でも保護者の負担を軽くする施策を行っています。
若い両親にとって、子育てには不安がつきものです。送迎ステーションにちょっとした相談に応じる窓口や、利用する親子が交流できる機能をつければ、親子、親同士、子ども同士のネットワークが生まれます。さらに、近所のお年寄りなど、子育ての「先輩」が遊びを教えに来たり、経験を踏まえてアドバイスをしたりと、子育てを通じた地域の人のつながりに育つ可能性もあるでしょう。
親子が気軽に集えるこうした「子育てステーション」を駅前など利便性のよい場所に設置し、地域のさまざまな人たちが気軽に立ち寄れる空間を作ることで、地域ぐるみの子育て支援を実現します。
□ 子育てを終えた地域のお母さんたちがピアカウンセリング
□ 妊娠から卒業まで切れ目のない「子育てまるっと相談支援」
□ 妊産婦・乳幼児支援(検診、栄養指導、育児訪問指導など)
□ お父さんの育児参加をバックアップ、ジェンダーフリーの子育てを推進
■ いじめや不登校など、子どもたちの悩みに向き合う相談窓口の充実を図ります。
いじめ防止対策推進法が制定、公布されてから10年近くになりますが、小中学生を対象とした国の調査では、約9割がいじめの被害・加害の少なくともいずれかを経験しているとされています。この状況は法の制定前後でもほぼ変化はなく、いじめ対策が進んだため、むしろ認知件数が増えたという話も聞こえてきます。
相談をするということは、最初はとても勇気がいることだと思います。SNSの活用など、気軽に相談できる環境の整備は一定の効果はあるものの、その後ろに「相談すれば助けてくれる」という信頼の裏付けがないと、むしろ相談する前よりも落胆と絶望に襲われることも考えられます。
相談窓口の充実は、この信頼の裏付けを確固たるものにすることです。そのためには、相談を受ける側がまず人権の尊重や多様性に関する理解を深め、小さなサインを見逃さないようスキルを磨き続けることが肝要です。学校など教育の場で、子どもたちに「個性」や「違い」を認め合う大切さを伝えることとあわせて、いじめは決して許さないという姿勢を行政がもっと明らかにすることが求められます。
■ GIGAスクールの取り組みを進め、これからの教育のあるべき姿を模索します。
GIGAスクールとは、タブレット端末、高速ネットワーク、クラウドを活用して、未来を担う子どもたちを育てる取り組みです。市川市も「いちかわGIGAスクール構想」に基づき、一人一台端末のメリットを生かした学習手法に創意工夫を凝らしています。
留意すべきは、ICTはあくまでも手段であり、これらの特徴を生かして教育効果を高めることがGIGAスクールの本当の目的だということです。また、オンライン教育は便利な反面、視力など健康面への影響だけでなく、集中力の持続や記憶の定着など課題も見えてきています。鋭意取り組みを進めるのと同時に、効果や課題などの検証を丁寧に行い、GIGAスクールが子どもたちの将来を明るく照らすものにまで高めていきます。
□ 食べ物を大切する心を育む食育の推進
市内には現在、15か所の高齢者サポートセンター(地域包括支援センター)があります。高齢者の介護予防や市が実施する介護サービス、権利擁護などさまざまな相談を受けています。地域包括ケアシステムは在宅医療の推進や医療と介護の連携促進を目的とするもので、市川市でも徐々に整備が進んできています。
一方、地域にはさまざまな世代や境遇にある方が暮らしています。子育てに関すること、障がいに関すること、生活困窮に関することなど、悩みごともさまざま。これらが複合的に生じていることも少なくありません。
重層的な相談支援体制は、こうしたさまざまな悩みに対し、時には個別に、時には連携して相談に応じ、解決を図ろうとする仕組みです。令和2年の改正社会福祉法は、「地域共生社会」の実現を図るため、分野横断的な相談体制の整備を進めることを自治体に投げかけています。身近なところにワンストップで対応できる相談窓口の整備を進め、地域で暮らしていくための安心感につなげていきます。
■ 通学路の安全を確保し、交通事故から子供たちを守ります。
令和2年6月に八街市で起こった、通学路を下校中の小学生を襲った死傷事故。2人の尊い命が奪われた痛ましい事態を受けて、市川市でも通学路の緊急一斉点検が行われています。危険個所と指摘された内容には、道幅が狭い、車ないし自転車の交通量が多い、歩道が狭い(ない)、といった、道路の構造上の問題に起因するものも多くみられます。
ところが、道路を広げるのはなかなか難しいです。ならば、路上にある物をどかして歩道を設けることを考えるべきです。送電線などのケーブルを地下に入れる無電柱化は景観と安全に優れた方法です。また、生活道路における車や自転車の速度を落とす方法としてハンプの設置も積極的に考えるべきでしょう。その他、交通規制や信号機等の設置も含め、関係機関とも連携して、通学路の安全をできるだけ高いレベルで確保できるよう、優先的に取り組みます。
■ 放課後保育クラブの量と質を確保し、地域で子どもを育てます。
幼稚園・保育園と小学校との間にあるといわれる「小1の壁」。夏休み、授業や宿題、学校行事など、これまでと環境が変わり、親にとっては育児と仕事の両立を厳しいと感じやすい時期です。
放課後保育クラブは幼保と学校をスムーズにつないで働く親をサポートするための施設ですが、単にお迎えがくるまでの時間を過ごすだけではない、保育園とは少し違った「質」が問われていると考えます。
低学年の子どもの場合、まずは安全の確保が必要です。学校内あるいは学校との併設であれば理想的です。学年が上がるにつれ、宿題をやる、勉強を教えるといった学習面のフォローも少しずつ求められてきます。子供の成長に合わせて、他者との共存や認め合う心を養うトレーニングの場としての役割もあります。こうした経験を地域で積むことで、自分も地域の一員だという気持ちが醸成されてくるとも思います。
教師のOBや大学生など、学校以外の地域の力で子どもの成長をサポートしていく仕組みをつくることで、放課後保育クラブは社会のミニチュアに近づきます。子どもたちはそこで地域のつながりに触れ、上級生が下級生を思いやる気持ちを育んでいく。大人の目がゆるやかにある中で、学童保育を拠点として、近所に住む大きな子と小さな子が一緒に遊んでいたような子どもたちの世界を構築します。
□ 家庭における仕事と子育ての両立支援(ベビーシッター・家事支援・病児保育など)
□ ひとり親家庭・生活困窮家庭向け学習支援
□ 発達に課題のある子どもと家庭への支援
□ 不妊・不育治療への支援強化
□ こどもの体力向上
□ 児童虐待・DV対策の強化
□ 医療的ケア児(重度心身障がい児)への支援強化(幼保学での受け入れ拡大)
■ LGBTQ、ダイバーシティなど、相互理解の基となる人権教育を推進します。
ダイバーシティは「多様性」という意味です。お互いの違いを受け入れ、認め合うことは、人と人とがつながる第一歩です。
市川市は平成4年2月から、パートナーシップ・ファミリーシップ届出制度をはじめました。性自認、性的指向の分野でのこうした取り組みは、性に関する多様性を行政として受け入れるひとつの形といえます。
私は、多様性を認めることは、バリア(障壁)に対する気づきと同じ根をもっていると思います。自分と違う相手の立場に立って考えることで、これまで気づかなかったバリアに気づくことができるからです。これは人権思想そのものです。
国籍、年齢、障がい、さまざまな違いを認め合うことが、地域のつながりでお互いに支え合う共生社会の実現につながります。そのための人権教育を推進し、人類普遍の価値を未来につなげていきます。
□ インクルーシブ教育システムの構築に着手
<環境>
■ 3Rと分別の意識を高め、ごみの発生抑制と資源化率の向上を図ります。
市川市のごみの資源化率は令和2年度で18.4%。過去5年間はほほ横ばいの傾向にあります。ごみの総排出量はゆるやかな減少傾向にありましたが、令和2年度はコロナ禍の影響で家庭ごみが若干増加しています。
市川市は自前で最終処分場をもっていません。クリーンセンターで焼却処分した残りの灰は、他の自治体の処分場に埋め立てていますが、だんだん余裕がなくなってきています。燃やした後の灰を減らす、つまり燃やすごみの中から資源化できるものを抜き取って、燃やす量を減らすことが必要です。例えば、「雑がみ」です。新聞紙や段ボールなど、資源回収でおなじみの紙以外の紙のことで、燃やすごみのうちの3割はこの雑がみだといわれています。このうちの一部でも資源化できれば、頭打ちだった資源化率をもう一段上げることができそうです。やはりごみを出す市民の一人ひとりが分別を意識することが不可欠です。
3Rは「リデュース(減らす)」「リユース(繰り返し使う)」「リサイクル(再資源化)」のことで、ごみの処分量を減らすにはこの順番で取り組むのが効率的とされています。まずはごみ自体を出さないようにすること、出す時にはできるだけきちんと分別すること。ごみの問題を市民みんなの問題として共有できるよう、啓発に努めます。
□ クリーンセンター建てかえに合わせた資源化施設の充実
■ 身近な自然を守り、ふるさとへの愛着を育てます。
市川市は、北部は下総台地の丘陵地帯、南部の海では三番瀬を臨みます。東京のベッドタウンとして開発が進んだ市川市ですが、南部には貴重な干潟があり、北部にも台地のへりから染み出る湧き水を中心に、里山の風景がなお点在しています。
市川市の南北に残る貴重な自然には共通点があります。それは、古くから人の暮らしと深いかかわりを持っていたという点です。人の生活と隣り合わせにある市川市の自然は、市川市で暮らしてきた人たちの歴史を映すものでもあります。
だとすれば、市川での自然環境の保全は、人とのかかわりの中でそれを進めていくべきです。市内に残された自然を単に守るということではなく、市民の方が直接触れることができ、その中から市川市の歴史を感じ取れるような形で保全をすることで、わが街を誇りに思う気持ちも醸成されてくるのではないでしょうか。
身近な自然を人に身近な形で守ることで、ふるさとの歴史を伝え、ふるさとへの愛着を育てていきたいと思います。
□ 生物多様性に関する市民理解の深化
□ 家庭で取り組む「ちょこっと菜園」「ちょこっと緑地」の推進
□ 再生可能エネルギーの導入促進
■ ペットと飼い主のよい関係。殺処分ゼロと飼育マナー向上に努めます。
家族の一員として迎えられ、飼い主と穏やかな毎日を過ごすペットがいる一方、大きくなって手に余る、増えてしまって手に負えなくなったなど、心ない飼い主によって捨てられたり、処分されるペットもいます。
ペットを飼おうとする人には、何をおいても命の大切さを知ってほしい。飼い主になったらそれを実感してほしい。そして、最期まで責任をもって世話をしてほしい。
ペットを飼うことはその命を預かることをしっかり理解していただくよう、保健所やペットショップなどと連携して、飼い方やしつけ、不妊手術といった飼い主としてのマナーと責任について啓発を進めます。やむを得ず手放す場合でも、譲渡会や里親募集などを利用して、殺処分を避けられるよう、関係者と協力してペットのセーフティネットを整備します。
<文化・スポーツ>
■ 赤ちゃんから障がい者まで、バリアフリーの文化・芸術イベントを増やします。
音楽や美術といった文化芸術に向き合う時に、言葉や知識はいりません。コンサートや展覧会で作品を前にして心を揺さぶられた経験は誰もが持っていると思います。スポーツもそうですが、見る者聞く人に直接響くのが、文化芸術活動のよいところです。
「本物」の作品が宿すそんな力を、みんなで分かち合ってみてはどうでしょう。○○○の方向け、からもう一歩進んで、大人も子どもも、健常者も障がい者も、みんな一緒に「本物」に触れてみるのです。演じる人や作品からだけでなく、鑑賞している側の人たちからも、きっと何かを感じるはずです。
文化や芸術は、社会の中で生きるさまざまな立場の人たちを丸ごと包み込み、そこにいる人の心を動かすことができると思います。文化や芸術がなしうる、本来のバリアフリーです。あらゆる人が平等に楽しめるバリアフリーの文化・芸術イベントを増やして、共生社会、包摂(インクルーシブ)社会の実現に向けた機運を醸成していければと思います。
□ 美術館の建設
■ 史跡や伝統行事など、市川がもつ有形無形の地域資源を守り、発信します。
市川市には、古くから人が築いてきた長い歴史があります。曽谷などにある貝塚、国府台周辺はかつての下総国の国府が置かれていました。源頼朝が鎌倉に入る際の通り道でしたし、中世の古戦場や城跡、近世の賑わいを彷彿とさせる行徳街道など、時代ごとの人の営みが史跡や行事として今も受け継がれています。そのどれもが、市川が誇る地域資源です。
土地に対する愛着は、その土地の歴史をひもとき、現在まで歩んできた道を知ることで、人々の心に宿るのだと思います。史跡や伝統行事などに関する積極的な情報発信を通じて、市川という地域に親しみを持ち、愛してもらえるよう、地域資源を活用していきます。
□ 市民の創作活動をサポートする文化講座、発表の場の充実
□ 新進アーティストの活動拠点となるアートラボ・アートセンターの設置
■ プロスポーツを誘致、子どもたちに夢を、まちに賑わいと活力を。
野球、サッカー、バスケットボール、バレーボールなど、様々なスポーツでプロリーグが結成されています。特徴的なのは、いずれも選手と地域の人たちとが積極的に交流し、地域密着型で運営されていることです。
地元のチームを応援するという1本の軸が、人を呼び、地域経済に活力を生み出します。特に子どもたちにとっては、夢とあこがれの対象にもなるでしょう。
子どもたちに夢を与えてくれるプロスポーツを市川に誘致して、地域の活性化を図ります。
■ スケートボードパークやパラスポーツの専用施設など、多様性に基づくスポーツ環境の整備に取り組みます。
東京オリンピック・パラリンピック2020は、コロナ禍の中で開催自体が議論を呼びましたが、アスリート、パラアスリートが躍動するさまは見る人に感動を与えました。特に新たに競技種目となったスケートボードや、ボッチャや車いすバスケ、ゴールボールなどのパラスポーツなどは、スポーツの世界がとても身近で開かれていて、誰でも楽しめるものであることを再認識させてくれました。
さまざまな境遇にある人たちがそれぞれできるスポーツを楽しんでいる姿は、社会の多様性をそのまま表していると思います。これまで打ち込む場所がなかった種目のための施設を設けるほか、既存の体育館で一定の日をパラスポーツデーにするなど、工夫を凝らしながら、誰でもいつでもスポーツにチャレンジできる環境を整えていきます。
□ サイクリングロード、ジョギングロードの整備拡大
行財政運営
■ 「選択と集中」で、財政運営にメリハリを。
市川市の財政は、市税収入が堅実で、いざという時のための貯金(財政調整基金)は県内最大、借金(市債)も少なくて健全だといわれます。
しかし、行政が抱えている課題は数多くあります。コロナ禍、少子高齢社会、地球温暖化など、これまでの暮らしが少しずつ変わり始め、災害対策、介護サービス、環境・エネルギーなどさまざまな場面で行政の対応が求められています。
「選択と集中」とは、行政がお金を使うべきところを見極めて、使うべきところには他から回してでも必要なだけのお金をつぎ込むことです。市民サービス向上のためといっても、漫然とお金を使っていればムダが生じます。政策に優先順位をつけるに当たり、効率性の観点も生きたお金の使い方に必要です。
まずは、コロナ禍を最小限に食い止めること。保健医療体制の充実と市内経済の立て直しで日々の暮らしに安心を取り戻すことを最優先で取り組みます。そして、安心を豊かさに引き上げるため、福祉は子育てから介護まで、地域を軸に切れ目のない施策を展開します。豊かさを次の世代に引き継ぐため、環境にやさしい持続可能なまちづくりの道筋をつけます。一方で、デジタル技術を活用して行政事務のコスト削減を図り、次の一手のための財源を確保します。
令和4年度予算は1,668億円と前年度を上回る規模ですが、経常収支比率は94.2%、つまり、将来をよくする投資にかけられるお金は多くはありません。ムダを排して生きたお金を正しく使うことを、今まで以上に意識しなければなりません。
■ 公共施設のマネジメント計画に、将来に向けた戦略を盛り込みます。
少子高齢化と人口減少に伴う税収減と義務的経費の増により、自治体の財政運営が厳しさを増す中、老朽化が進む公共施設の維持管理は全国的な課題です。市川市も公共施設等総合管理計画を策定し、建物の長寿命化や施設配置の適正化を進めることで、建て替えなどによる財政負担の平準化を図っています。
計画を着実に実行していくことはもちろん大切ですが、経費縮減の中にも戦略的なメリハリを持たせ、市民の利便性を高めていくことが必要です。例えば、世代を越えて市民が集う場をつくり、地域に人のつながりを生み出すための施設を整備し、市役所の証明業務やさまざまな分野の相談窓口を集約して設置することが考えられます。
未来の市民が便利だと思えるよう、ビジョンをしっかりと描きながら、公共施設の再整備も進めていく必要があります。
□ 市長の退職金CUT。身を切る改革を進めます。
□ 市役所の調達は市内業者を基本とする。
□ タウンミーティングの開催
防災・防犯
■ 防災拠点や避難所に水・トイレ・非常用電源を確保し、「発災後72時間」を乗り切る万全の体制を構築します。
災害から命を守れるかどうかは、発災から「72時間」が分岐点といわれます。市民の命を守るため、この最初の3日間で行政がやるべきことは、一時避難所を速やかに開設し、水とトイレ、それと電源の確保です。水は命を守るのに不可欠ですし、きちんとしたトイレの確保は、衛生環境の維持に加え、プライバシーが守られた空間を確実に用意することも含みます。電源は情報収集に便利なスマートフォンなどを充電するほか、医療機器を稼動させるのにも必要です。
こうした備えによって、被災した市民が「72時間」を乗り切り、復興への希望と意欲を抱けるよう、万全な体制を構築するのが行政の務めです。
■ バリアフリーやプライバシー、心のケアに配慮した「避難生活のあるべき姿」を追求します。
災害時の避難生活では、怖い思いをした後に狭い場所で不便な生活を強いられる避難者の心のケアも重要です。いつ起こるかもしれない災害への備えとして、少しでも安心できる避難所を目指す必要があります。
私たちは、地震や水害に遭った全国の被災地から、さまざまなことを学ばなければなりません。また、男性と女性、子どもやお年寄り、障がいや基礎疾患のある人や、医療・介助などに携わる人など、それぞれの立場でのニーズを把握して、ひとつずつ解決を図っていくことも大切です。避難生活の中でも、バリアフリーを取り込み、プライバシーに配慮して、できる限り心を癒すための要素を盛り込めるよう、行政も丁寧に考えていかなければなりません。
ひとまずの安心感を持つことで、生活を立て直す意欲が生まれる。避難所にはそんな機能も求められていると思います。
■ 要支援者避難リストと福祉避難所の整備を進め、誰も取り残さない避難体制を構築します。
要支援者避難リストは、高齢者や障がい者など、災害時の避難にサポートを必要とする方の名簿です。これら災害弱者と呼ばれる方に対するサポートは、移動の手助けだけでなく、いつどこに避難すべきか、避難情報に基づいて判断することも含まれます。避難の前の段階からサポートに入ることが必要です。
リストに名前を載せることについては、健康や身体の状況などのセンシティブな情報を他人に知られてしまうリスクを感じている方もいらっしゃると思います。こうした不安を解消してもらうため、どんな手助けが必要かを考える基礎としてリストの整備が有用となることをより多くの人に理解していただけるよう、啓発に努めます。また、要支援者の方が安心して避難できるよう、バリアフリーなど必要な機能を備えた福祉避難所を用意します。この2つのセーフティネットで、誰も取り残さない避難体制をつくります。
■ 住宅・建物の耐震化や浸水防止、市内に散在する土砂災害危険個所について、安全対策を進めます。
近年は全国的に大きな地震や「50年に一度」の大雨に見舞われることが増えているように思います。地震や大雨に強いまちづくりを進めるに当たり、住宅や建物の耐震化、浸水防止対策は、市民の命を守る直接的な取り組みです。市内には55か所の土砂災害警戒区域が指定されていますが、崖地の崩落防止は近隣住民の安全のほか、避難経路の確保のためにも不可欠です。道路冠水などの浸水被害対策も同様に必要です。
災害に強いまちをつくるため、家屋の耐震化・浸水防止対策に対する助成を進めるほか、崖地の安全対策にも速やかに取り組んでいきます。
□ 台風・大雨による内水氾濫の防止
まちづくり
■ 空き地・空き家対策を推進し、土地や物件の利活用を図ります。
高齢化が進み、管理不全となる空き地や空き家は増える傾向にあります。都市部の空き家に管理が行き渡らなくなると、防犯や衛生面などで周囲の住環境にも悪い影響が及びます。空き地や空き家の利活用は、地域全体の価値にかかわる重要なテーマです。
都市部の利便性が高い場所に生じた空き地や空き家は、緑を守り、人が行き交う空間として、地域活性化と環境保全の両立を目指した活用を考えるべきと思います。ふらっと立ち寄れる憩いの場、サークル活動や地域ボランティア、ピアカウンセリングの場所としても活用できるでしょう。土地建物の所有者と協力して、地域の「お荷物」だった空き地や空き家を地域のにぎわいの拠点に生まれ変わらせるような活用制度を構築していきます。
■ 秩序ある住宅地の形成と都市緑地の保全の両立を図ります。
市内の土地利用に関する基本的なエリア分けに、市街化区域と市街化調整区域があります。市街化調整区域は、農地や緑地などを現状のまま保つエリアで、住宅など建物を建てるには原則として県知事の許可が必要です。
いわゆる「50戸連たん」は、市街化調整区域で宅地開発を行う代表的な方法ですが、これがバラバラに進んでしまうと、市域全体として区画がまちまちとなり、結果的に、住みにくいまちとなるおそれがあります。市川市全体で秩序あるまちづくりを進めるには、市街化区域と市街化調整区域の「線引き」から見直して、住宅と緑地・農地をバランスよく組み合わせることが必要です。
他方、市街化区域の側には、緑がある地区を市が生産緑地に指定し、農地を保全する仕組みがあります。生産緑地は農地並みの課税となり、農地として維持されます。
もともと生産緑地は、1992年に始まった制度で、これに指定されると30年間はそこを農地として利用することが義務づけられました。30年が過ぎた後は自治体に買取りを申し出ることができますが、自治体が買い取らなかったり、農地として他の農家に引き継がれなければ、生産緑地の指定が解除されます。
今年は2022年、生産緑地の指定から30年が経つ最初の年に当たります。買取りの申し出があった土地は、まちづくりの計画に照らして活用を考える必要があります。
東京都に隣接し、利便性が高いという立地条件は、市川市にとって最大のセールスポイントといえます。整然としたまち並みと緑が両立する心地よいまちづくりを進め、市川市の魅力をさらに高め、選ばれるまちにしていきます。
■ 駅前再開発では、まちのデザインを関係者で共有し、最適解を導けるよう注力します。
令和元年8月に策定された本八幡駅北口再開発基本構想は、再開発が完了した地区の道路を挟んで東側を対象としたものです。建物が密集し、道路が狭いこの地区を再編し、防災性を高め、快適でゆとりある空間の充実を図るとしています。
現在はこの基本構想に基づき、地権者、事業者、行政が協働して、街づくりの具体的な計画の検討に入っています。JR、京成、都営地下鉄の3線が入る交通至便の貴重な区域に、市としても市民にとって不可欠な施設を整備したいところです。多様なニーズを受け止め、活気にあふれるまちを目指して、最適解を導き出せるよう注力していきます。
■(仮称)押切橋・大洲橋の早期開通を働きかけ、地域の利便性向上と連携強化を図ります。
行徳駅入口交差点から江戸川区の柴又街道につながる(仮称)押切橋の事業計画がようやく動き出しました。事業期間は2031年度までとされています。
行徳地域と江戸川区を結ぶ旧江戸川の橋は、現在、広尾防災公園の脇にかかる今井橋の1つしかありません。今井橋の上流にある一般道路の橋は国道14号の市川橋、この間の8kmは首都圏の人口集中地区では最長の間隔です。ここに橋がかかることで、対岸へのアクセスが複線となり、今井橋に集中していた交通混雑の緩和や、行徳地域と江戸川区との行き来の活発化も期待できます。1日も早い開通に向けて県に働きかけていきます。
もう1つ、江戸川の架橋が待たれているのが(仮称)大洲橋です。江戸川の架橋は市川市の防災機能の観点からも重要なテーマです。こちらも早期の事業化に向け、県に強く要望していきます。
■ 道路の無電柱化を進め、人にやさしい街並みをつくります。
景観法の施行から20年あまり、景観まちづくりの考え方もかなり一般的になってきたせいか、市川市内も含めて、道路の無電柱化が少しずつ広がってきたように感じます。
無電柱化のメリットは、まちの景観がよくなるだけではありません。道路上の大きな障害物がなくなり、人や車にとって通行の安全性が上がります。バリアフリーの観点からも効果があります。
また、無電柱化は防災の面でも有効です。阪神・淡路大震災では、切れて垂れ下がった電線が火災を引き起こしたほか、救急や消防活動にも支障をきたしたといいます。電線などのケーブルが地下に入ることで、電気や電話などの社会インフラが災害にも強くなります。
安全・安心のまちづくりにとって、無電柱化は大きな効果をもたらします。着実に、その分、市川のまちの魅力は確実に高まります。
□ 地域で偏りのない公園・緑地の整備
■ 市内でお金を循環させ、地域経済の活性化と市の財源安定の両立を図ります。
市民の中には、東京などの市外で働いている方が多くいらっしゃいます。市川市の税収のうち、およそ半分は個人市民税が占めていますから、市の財政の中には、市外から入ってきたお金が結構あると言ってもいいでしょう。
経済では、お金は血液のようなもの。経済を活性化する方法の1つは、動くお金の量を増やすことです。市の税金をできる限り市内で使うようにすれば、経済の活性化につながるだけでなく、その先には市内の事業者から税金として市に戻ってくるという循環があり、市の財政の安定にも貢献することになります。
市内でお金を循環させる施策を通じて、まちの活力を引き出します。
■ Wi-Fiスポット(公衆無線LAN)を市内全域に整備します。
スマートフォンの普及が進み、多くの市民がモバイル端末を使って情報に触れる時代、無線通信環境も重要なインフラの1つです。市川市も市役所、公民館、地域ふれあい館など多くの公共施設に「市川市フリーWi-Fi」を整備してきました。今後さらに整備を加速し、公共施設のみならず市域全体にWi-Fiスポットを広げることが必要です。
市がWi-Fiスポットを整備する大きな理由のひとつは、災害時の情報提供手段を確保することです。無線通信自体はすでに携帯電話会社の各回線が張り巡らされていますが、これまでの大きな災害では、携帯電話やインターネットがつながらないことがしばしば起きています。この時、市のWi-Fiスポットの災害時用の通信回線をあてがえば、避難や被害に関する情報を継続的に提供することができますし、被災者同士の安否確認も安定的に行えます。平時は市からの情報発信ツール、音声案内などバリアフリーの活用が考えられます。
他の通信事業者と連携協力して、まずはすべての市の施設に、さらに人が集まる施設や区域にWi-Fiスポットを順次整備します。
保健・福祉
■ 感染症から市民を守るため、予防接種の費用助成を拡大します。
新型コロナウイルスの感染拡大で、ワクチン接種の重要性が改めて認識されてきたと思います。大きな病気をしないよう、生まれてから数年の間に、子どもは何種類もの予防接種を計画的に行うことになっていますが、母子健康手帳を片手に今度はいつ何のワクチンを、と考えるのもなかなか大変なことです。
市民のいのちを守るため、かかりつけ医をつくり、必要な予防接種をしっかりと受けられるような環境を整える必要があります。とりわけ予防接種は、病気にかかり医師にかかる確率を下げる意味で効果的な手段のひとつです。特に子育て世帯に対しては、法定・任意にかかわらず、予防接種の種類や接種時期、副反応など安全性に関することなど、正しい情報に基づいて適切に接種を受けられるよう、費用助成を含めて家族をしっかりサポートする必要があります。
コロナ禍を経て、私たちは感染症の猛威が社会そのものを機能不全にする危険があることを突きつけられました。日常生活を守るためにも、予防接種がさらに身近なものとなるよう、接種機会を拡大します。
■ 認知症に対する理解を深め、認知症予防を推進します。
高齢社会が進み、加齢とともに増える認知症患者数は、2025年には65歳以上の高齢者の5人に1人に達するといわれています。2025年は団塊の世代が75歳、後期高齢者になり始める時期でもあります。認知症支援と認知症予防はまさに喫緊の課題です。
市川市でも、認知症サポーターの養成や認知症ガイドブックなど、認知症に対する啓発を進めていますが、認知症の予防にも本格的に取り組む必要があります。
年のせい、と自覚しにくいともいわれる認知症、まずは病気なのかどうか、自分自身の状態を知ることが大切です。横浜市やさいたま市、練馬区など「もの忘れ検診」(簡易検査)を無料で実施している自治体もあります。
また、認知症の予防に取り組むことも必要です。適度な運動や栄養バランスの取れた食事、地域活動などの社会参加は、認知症の予防にも一定の効果があるといわれています。フレイル予防に認知症予防の要素も取り込んで、無料検査と予防指導の両面から、高齢者の心身の健康づくりを進めます。
□ 介護予防・フレイル対策の充実強化
□ 生活習慣・栄養指導による基礎体力・免疫力の向上
□ 健康マイレージの普及促進
□ ジェネリック医薬品の普及促進
■ 在宅医療や介護の資源確保に取り組みます。
「老老介護」という言葉があります。高齢化が進み、在宅の介護をする側も高齢者だという状況です。特養ホームやグループホーム整備が需要に追いつかず、介護の負担が家族に大きくのしかかっています。在宅介護の環境改善は喫緊の課題です。
在宅介護を充実させるには、介護人材の確保が不可欠です。介護ロボットなどICTの活用も一つの手段ですが、その人にあった介護メニューを組み立てるにはやはり人のチカラが必要です。国も介護人材の処遇改善を進めていますが、生計を立てる職業としては他の産業に大きく後れをとっている状況です。特に福祉を志す若い人にとって、介護のしごとを経済的にも魅力あるものにしなければなりません。
介護関係の資格取得に向けた助成のほか、介護職員に直接行き渡る人件費補助を市独自で上乗せ制度など、介護する側、される側の双方が安心できる体制を目指します。
■ 地域包括ケアシステムを発展させ、地域に重層的な相談支援体制を構築します。
市内には現在、15か所の高齢者サポートセンター(地域包括支援センター)があります。高齢者の介護予防や市が実施する介護サービス、権利擁護などさまざまな相談を受けています。地域包括ケアシステムは在宅医療の推進や医療と介護の連携促進を目的とするもので、市川市でも徐々に整備が進んできています。
一方、地域にはさまざまな世代や境遇にある方が暮らしています。子育てに関すること、障がいに関すること、生活困窮に関することなど、悩みごともさまざま。これらが複合的に生じていることも少なくありません。
重層的な相談支援体制は、こうしたさまざまな悩みに対し、時には個別に、時には連携して相談に応じ、解決を図ろうとする仕組みです。令和2年の改正社会福祉法は、「地域共生社会」の実現を図るため、分野横断的な相談体制の整備を進めることを自治体に投げかけています。身近なところにワンストップで対応できる相談窓口の整備を進め、地域で暮らしていくための安心感につなげていきます。
■ シルバーパスを導入し、お年寄りの外出をサポートします。
お年寄りが外に出て活動するには、公共交通機関を利用しやすくすることも重要です。自宅近くから駅や公共施設、買い物や病院などに出かけるのに身近な存在のひとつはバスですが、乗る人が少なければ運行本数が減り、それが利用者離れを加速させるという悪循環に陥りがちです。
そこで、検討を進めたいのがオンデマンド交通です。シルバーパスを導入して経済的な負担を軽くすることと合わせて、お年寄りの外出を支え、コミュニティバスと合わせ、地域の交通ネットワークを確保、地域の活力の基盤を整えます。
■ 障がい者・高齢者等の就労を支援し、自己実現と社会参加を後押しします。
東京パラリンピック2020では、様々な障がいをもつパラアスリートたちが躍動していました。今年の北京冬季パラリンピックでも、選手たちの努力の成果が存分に披露されるはずです。中でも、競技を終えた後の選手たちが、抱えている障がいを共に乗り越え、たたえ合う姿はとてもまぶしく映ります。自己実現とは、生きがいをもって日々を過ごしていくことそのものなのだと改めて感じます。
世界は今、インクルーシブ(包摂)に向けてかじを切っています。障がい者や高齢者に対する就労支援は、1人ひとりの生きがいを大切にする取り組みです。それには周囲の人たちの意識の変革も求められます。インクルーシブ社会の実現に取り組む事業者を応援し、チャレンジする障がい者・高齢者の自己実現を支えます。
□ 市内教育機関と連携した学び直しの場の提供
□ 世代を越えて交流できる地域拠点の整備
こども・教育
■「幼保・小・中」をクロスフェード化する取り組みを進め、ギャップの解消に努めます。
小中一貫教育への取り組みが全国で進められています。文部科学省の実態調査では、子どもたちの不安が解消され、学習や生活態度が好転したといった「中1ギャップ」を低減する効果が認められたとされています。
市川市では塩浜学園が義務教育学校として小中一貫教育をスタートさせました。今後さらに小中一貫校を増やしていくのに必要なのは、小・中学校の先生方が協力しやすい体制を整えることです。塩浜学園の経験に基づき、教育委員会が学校現場をしっかりサポートする仕組みを構築し、小中のギャップ解消に取り組みます。
子どもや親が直面する「ギャップ」は、幼稚園・保育園と小学校との間にもあります。ここにも、幼保・小の先生方の相互協力・連携が必要となるでしょう。ギャップの原因を究明し、解消策を模索しながら、切れ目のない体制整備を目指します。
■ 駅前などに、親子で交流を深められる「子育てステーション」を設置します。
子育て世代は同時に働く世代でもあります。仕事と子育てを両立する彼らのライフサイクルに着目すると、保育園や子育て支援施設は駅前からアプローチできるのが便利です。子育て世代が多く転入する流山市では、主要駅に送迎保育ステーションを設置し、自宅から遠い保育園への送迎でも保護者の負担を軽くする施策を行っています。
若い両親にとって、子育てには不安がつきものです。送迎ステーションにちょっとした相談に応じる窓口や、利用する親子が交流できる機能をつければ、親子、親同士、子ども同士のネットワークが生まれます。さらに、近所のお年寄りなど、子育ての「先輩」が遊びを教えに来たり、経験を踏まえてアドバイスをしたりと、子育てを通じた地域の人のつながりに育つ可能性もあるでしょう。
親子が気軽に集えるこうした「子育てステーション」を駅前など利便性のよい場所に設置し、地域のさまざまな人たちが気軽に立ち寄れる空間を作ることで、地域ぐるみの子育て支援を実現します。
□ 子育てを終えた地域のお母さんたちがピアカウンセリング
□ 妊娠から卒業まで切れ目のない「子育てまるっと相談支援」
□ 妊産婦・乳幼児支援(検診、栄養指導、育児訪問指導など)
□ お父さんの育児参加をバックアップ、ジェンダーフリーの子育てを推進
■ いじめや不登校など、子どもたちの悩みに向き合う相談窓口の充実を図ります。
いじめ防止対策推進法が制定、公布されてから10年近くになりますが、小中学生を対象とした国の調査では、約9割がいじめの被害・加害の少なくともいずれかを経験しているとされています。この状況は法の制定前後でもほぼ変化はなく、いじめ対策が進んだため、むしろ認知件数が増えたという話も聞こえてきます。
相談をするということは、最初はとても勇気がいることだと思います。SNSの活用など、気軽に相談できる環境の整備は一定の効果はあるものの、その後ろに「相談すれば助けてくれる」という信頼の裏付けがないと、むしろ相談する前よりも落胆と絶望に襲われることも考えられます。
相談窓口の充実は、この信頼の裏付けを確固たるものにすることです。そのためには、相談を受ける側がまず人権の尊重や多様性に関する理解を深め、小さなサインを見逃さないようスキルを磨き続けることが肝要です。学校など教育の場で、子どもたちに「個性」や「違い」を認め合う大切さを伝えることとあわせて、いじめは決して許さないという姿勢を行政がもっと明らかにすることが求められます。
■ GIGAスクールの取り組みを進め、これからの教育のあるべき姿を模索します。
GIGAスクールとは、タブレット端末、高速ネットワーク、クラウドを活用して、未来を担う子どもたちを育てる取り組みです。市川市も「いちかわGIGAスクール構想」に基づき、一人一台端末のメリットを生かした学習手法に創意工夫を凝らしています。
留意すべきは、ICTはあくまでも手段であり、これらの特徴を生かして教育効果を高めることがGIGAスクールの本当の目的だということです。また、オンライン教育は便利な反面、視力など健康面への影響だけでなく、集中力の持続や記憶の定着など課題も見えてきています。鋭意取り組みを進めるのと同時に、効果や課題などの検証を丁寧に行い、GIGAスクールが子どもたちの将来を明るく照らすものにまで高めていきます。
□ 食べ物を大切する心を育む食育の推進
市内には現在、15か所の高齢者サポートセンター(地域包括支援センター)があります。高齢者の介護予防や市が実施する介護サービス、権利擁護などさまざまな相談を受けています。地域包括ケアシステムは在宅医療の推進や医療と介護の連携促進を目的とするもので、市川市でも徐々に整備が進んできています。
一方、地域にはさまざまな世代や境遇にある方が暮らしています。子育てに関すること、障がいに関すること、生活困窮に関することなど、悩みごともさまざま。これらが複合的に生じていることも少なくありません。
重層的な相談支援体制は、こうしたさまざまな悩みに対し、時には個別に、時には連携して相談に応じ、解決を図ろうとする仕組みです。令和2年の改正社会福祉法は、「地域共生社会」の実現を図るため、分野横断的な相談体制の整備を進めることを自治体に投げかけています。身近なところにワンストップで対応できる相談窓口の整備を進め、地域で暮らしていくための安心感につなげていきます。
■ 通学路の安全を確保し、交通事故から子供たちを守ります。
令和2年6月に八街市で起こった、通学路を下校中の小学生を襲った死傷事故。2人の尊い命が奪われた痛ましい事態を受けて、市川市でも通学路の緊急一斉点検が行われています。危険個所と指摘された内容には、道幅が狭い、車ないし自転車の交通量が多い、歩道が狭い(ない)、といった、道路の構造上の問題に起因するものも多くみられます。
ところが、道路を広げるのはなかなか難しいです。ならば、路上にある物をどかして歩道を設けることを考えるべきです。送電線などのケーブルを地下に入れる無電柱化は景観と安全に優れた方法です。また、生活道路における車や自転車の速度を落とす方法としてハンプの設置も積極的に考えるべきでしょう。その他、交通規制や信号機等の設置も含め、関係機関とも連携して、通学路の安全をできるだけ高いレベルで確保できるよう、優先的に取り組みます。
■ 放課後保育クラブの量と質を確保し、地域で子どもを育てます。
幼稚園・保育園と小学校との間にあるといわれる「小1の壁」。夏休み、授業や宿題、学校行事など、これまでと環境が変わり、親にとっては育児と仕事の両立を厳しいと感じやすい時期です。
放課後保育クラブは幼保と学校をスムーズにつないで働く親をサポートするための施設ですが、単にお迎えがくるまでの時間を過ごすだけではない、保育園とは少し違った「質」が問われていると考えます。
低学年の子どもの場合、まずは安全の確保が必要です。学校内あるいは学校との併設であれば理想的です。学年が上がるにつれ、宿題をやる、勉強を教えるといった学習面のフォローも少しずつ求められてきます。子供の成長に合わせて、他者との共存や認め合う心を養うトレーニングの場としての役割もあります。こうした経験を地域で積むことで、自分も地域の一員だという気持ちが醸成されてくるとも思います。
教師のOBや大学生など、学校以外の地域の力で子どもの成長をサポートしていく仕組みをつくることで、放課後保育クラブは社会のミニチュアに近づきます。子どもたちはそこで地域のつながりに触れ、上級生が下級生を思いやる気持ちを育んでいく。大人の目がゆるやかにある中で、学童保育を拠点として、近所に住む大きな子と小さな子が一緒に遊んでいたような子どもたちの世界を構築します。
□ 家庭における仕事と子育ての両立支援(ベビーシッター・家事支援・病児保育など)
□ ひとり親家庭・生活困窮家庭向け学習支援
□ 発達に課題のある子どもと家庭への支援
□ 不妊・不育治療への支援強化
□ こどもの体力向上
□ 児童虐待・DV対策の強化
□ 医療的ケア児(重度心身障がい児)への支援強化(幼保学での受け入れ拡大)
■ LGBTQ、ダイバーシティなど、相互理解の基となる人権教育を推進します。
ダイバーシティは「多様性」という意味です。お互いの違いを受け入れ、認め合うことは、人と人とがつながる第一歩です。
市川市は平成4年2月から、パートナーシップ・ファミリーシップ届出制度をはじめました。性自認、性的指向の分野でのこうした取り組みは、性に関する多様性を行政として受け入れるひとつの形といえます。
私は、多様性を認めることは、バリア(障壁)に対する気づきと同じ根をもっていると思います。自分と違う相手の立場に立って考えることで、これまで気づかなかったバリアに気づくことができるからです。これは人権思想そのものです。
国籍、年齢、障がい、さまざまな違いを認め合うことが、地域のつながりでお互いに支え合う共生社会の実現につながります。そのための人権教育を推進し、人類普遍の価値を未来につなげていきます。
□ インクルーシブ教育システムの構築に着手
環境
■ 3Rと分別の意識を高め、ごみの発生抑制と資源化率の向上を図ります。
市川市のごみの資源化率は令和2年度で18.4%。過去5年間はほほ横ばいの傾向にあります。ごみの総排出量はゆるやかな減少傾向にありましたが、令和2年度はコロナ禍の影響で家庭ごみが若干増加しています。
市川市は自前で最終処分場をもっていません。クリーンセンターで焼却処分した残りの灰は、他の自治体の処分場に埋め立てていますが、だんだん余裕がなくなってきています。燃やした後の灰を減らす、つまり燃やすごみの中から資源化できるものを抜き取って、燃やす量を減らすことが必要です。例えば、「雑がみ」です。新聞紙や段ボールなど、資源回収でおなじみの紙以外の紙のことで、燃やすごみのうちの3割はこの雑がみだといわれています。このうちの一部でも資源化できれば、頭打ちだった資源化率をもう一段上げることができそうです。やはりごみを出す市民の一人ひとりが分別を意識することが不可欠です。
3Rは「リデュース(減らす)」「リユース(繰り返し使う)」「リサイクル(再資源化)」のことで、ごみの処分量を減らすにはこの順番で取り組むのが効率的とされています。まずはごみ自体を出さないようにすること、出す時にはできるだけきちんと分別すること。ごみの問題を市民みんなの問題として共有できるよう、啓発に努めます。
□ クリーンセンター建てかえに合わせた資源化施設の充実
■ 身近な自然を守り、ふるさとへの愛着を育てます。
市川市は、北部は下総台地の丘陵地帯、南部の海では三番瀬を臨みます。東京のベッドタウンとして開発が進んだ市川市ですが、南部には貴重な干潟があり、北部にも台地のへりから染み出る湧き水を中心に、里山の風景がなお点在しています。
市川市の南北に残る貴重な自然には共通点があります。それは、古くから人の暮らしと深いかかわりを持っていたという点です。人の生活と隣り合わせにある市川市の自然は、市川市で暮らしてきた人たちの歴史を映すものでもあります。
だとすれば、市川での自然環境の保全は、人とのかかわりの中でそれを進めていくべきです。市内に残された自然を単に守るということではなく、市民の方が直接触れることができ、その中から市川市の歴史を感じ取れるような形で保全をすることで、わが街を誇りに思う気持ちも醸成されてくるのではないでしょうか。
身近な自然を人に身近な形で守ることで、ふるさとの歴史を伝え、ふるさとへの愛着を育てていきたいと思います。
□ 生物多様性に関する市民理解の深化
□ 家庭で取り組む「ちょこっと菜園」「ちょこっと緑地」の推進
□ 再生可能エネルギーの導入促進
■ ペットと飼い主のよい関係。殺処分ゼロと飼育マナー向上に努めます。
家族の一員として迎えられ、飼い主と穏やかな毎日を過ごすペットがいる一方、大きくなって手に余る、増えてしまって手に負えなくなったなど、心ない飼い主によって捨てられたり、処分されるペットもいます。
ペットを飼おうとする人には、何をおいても命の大切さを知ってほしい。飼い主になったらそれを実感してほしい。そして、最期まで責任をもって世話をしてほしい。
ペットを飼うことはその命を預かることをしっかり理解していただくよう、保健所やペットショップなどと連携して、飼い方やしつけ、不妊手術といった飼い主としてのマナーと責任について啓発を進めます。やむを得ず手放す場合でも、譲渡会や里親募集などを利用して、殺処分を避けられるよう、関係者と協力してペットのセーフティネットを整備します。
文化・スポーツ
■ 赤ちゃんから障がい者まで、バリアフリーの文化・芸術イベントを増やします。
音楽や美術といった文化芸術に向き合う時に、言葉や知識はいりません。コンサートや展覧会で作品を前にして心を揺さぶられた経験は誰もが持っていると思います。スポーツもそうですが、見る者聞く人に直接響くのが、文化芸術活動のよいところです。
「本物」の作品が宿すそんな力を、みんなで分かち合ってみてはどうでしょう。○○○の方向け、からもう一歩進んで、大人も子どもも、健常者も障がい者も、みんな一緒に「本物」に触れてみるのです。演じる人や作品からだけでなく、鑑賞している側の人たちからも、きっと何かを感じるはずです。
文化や芸術は、社会の中で生きるさまざまな立場の人たちを丸ごと包み込み、そこにいる人の心を動かすことができると思います。文化や芸術がなしうる、本来のバリアフリーです。あらゆる人が平等に楽しめるバリアフリーの文化・芸術イベントを増やして、共生社会、包摂(インクルーシブ)社会の実現に向けた機運を醸成していければと思います。
□ 美術館の建設
■ 史跡や伝統行事など、市川がもつ有形無形の地域資源を守り、発信します。
市川市には、古くから人が築いてきた長い歴史があります。曽谷などにある貝塚、国府台周辺はかつての下総国の国府が置かれていました。源頼朝が鎌倉に入る際の通り道でしたし、中世の古戦場や城跡、近世の賑わいを彷彿とさせる行徳街道など、時代ごとの人の営みが史跡や行事として今も受け継がれています。そのどれもが、市川が誇る地域資源です。
土地に対する愛着は、その土地の歴史をひもとき、現在まで歩んできた道を知ることで、人々の心に宿るのだと思います。史跡や伝統行事などに関する積極的な情報発信を通じて、市川という地域に親しみを持ち、愛してもらえるよう、地域資源を活用していきます。
□ 市民の創作活動をサポートする文化講座、発表の場の充実
□ 新進アーティストの活動拠点となるアートラボ・アートセンターの設置
■ プロスポーツを誘致、子どもたちに夢を、まちに賑わいと活力を。
野球、サッカー、バスケットボール、バレーボールなど、様々なスポーツでプロリーグが結成されています。特徴的なのは、いずれも選手と地域の人たちとが積極的に交流し、地域密着型で運営されていることです。
地元のチームを応援するという1本の軸が、人を呼び、地域経済に活力を生み出します。特に子どもたちにとっては、夢とあこがれの対象にもなるでしょう。
子どもたちに夢を与えてくれるプロスポーツを市川に誘致して、地域の活性化を図ります。
■ スケートボードパークやパラスポーツの専用施設など、多様性に基づくスポーツ環境の整備に取り組みます。
東京オリンピック・パラリンピック2020は、コロナ禍の中で開催自体が議論を呼びましたが、アスリート、パラアスリートが躍動するさまは見る人に感動を与えました。特に新たに競技種目となったスケートボードや、ボッチャや車いすバスケ、ゴールボールなどのパラスポーツなどは、スポーツの世界がとても身近で開かれていて、誰でも楽しめるものであることを再認識させてくれました。
さまざまな境遇にある人たちがそれぞれできるスポーツを楽しんでいる姿は、社会の多様性をそのまま表していると思います。これまで打ち込む場所がなかった種目のための施設を設けるほか、既存の体育館で一定の日をパラスポーツデーにするなど、工夫を凝らしながら、誰でもいつでもスポーツにチャレンジできる環境を整えていきます。
□ サイクリングロード、ジョギングロードの整備拡大
行財政運営
■ 「選択と集中」で、財政運営にメリハリを。
市川市の財政は、市税収入が堅実で、いざという時のための貯金(財政調整基金)は県内最大、借金(市債)も少なくて健全だといわれます。
しかし、行政が抱えている課題は数多くあります。コロナ禍、少子高齢社会、地球温暖化など、これまでの暮らしが少しずつ変わり始め、災害対策、介護サービス、環境・エネルギーなどさまざまな場面で行政の対応が求められています。
「選択と集中」とは、行政がお金を使うべきところを見極めて、使うべきところには他から回してでも必要なだけのお金をつぎ込むことです。市民サービス向上のためといっても、漫然とお金を使っていればムダが生じます。政策に優先順位をつけるに当たり、効率性の観点も生きたお金の使い方に必要です。
まずは、コロナ禍を最小限に食い止めること。保健医療体制の充実と市内経済の立て直しで日々の暮らしに安心を取り戻すことを最優先で取り組みます。そして、安心を豊かさに引き上げるため、福祉は子育てから介護まで、地域を軸に切れ目のない施策を展開します。豊かさを次の世代に引き継ぐため、環境にやさしい持続可能なまちづくりの道筋をつけます。一方で、デジタル技術を活用して行政事務のコスト削減を図り、次の一手のための財源を確保します。
令和4年度予算は1,668億円と前年度を上回る規模ですが、経常収支比率は94.2%、つまり、将来をよくする投資にかけられるお金は多くはありません。ムダを排して生きたお金を正しく使うことを、今まで以上に意識しなければなりません。
■ 公共施設のマネジメント計画に、将来に向けた戦略を盛り込みます。
少子高齢化と人口減少に伴う税収減と義務的経費の増により、自治体の財政運営が厳しさを増す中、老朽化が進む公共施設の維持管理は全国的な課題です。市川市も公共施設等総合管理計画を策定し、建物の長寿命化や施設配置の適正化を進めることで、建て替えなどによる財政負担の平準化を図っています。
計画を着実に実行していくことはもちろん大切ですが、経費縮減の中にも戦略的なメリハリを持たせ、市民の利便性を高めていくことが必要です。例えば、世代を越えて市民が集う場をつくり、地域に人のつながりを生み出すための施設を整備し、市役所の証明業務やさまざまな分野の相談窓口を集約して設置することが考えられます。
未来の市民が便利だと思えるよう、ビジョンをしっかりと描きながら、公共施設の再整備も進めていく必要があります。
□ タウンミーティングの開催
□ 市役所の調達は市内業者を基本とする。
□ 市長の退職金CUT。身を切る改革を進めます。
防災・防犯
■ 防災拠点や避難所に水・トイレ・非常用電源を確保し、「発災後72時間」を乗り切る万全の体制を構築します。
災害から命を守れるかどうかは、発災から「72時間」が分岐点といわれます。市民の命を守るため、この最初の3日間で行政がやるべきことは、一時避難所を速やかに開設し、水とトイレ、それと電源の確保です。水は命を守るのに不可欠ですし、きちんとしたトイレの確保は、衛生環境の維持に加え、プライバシーが守られた空間を確実に用意することも含みます。電源は情報収集に便利なスマートフォンなどを充電するほか、医療機器を稼動させるのにも必要です。
こうした備えによって、被災した市民が「72時間」を乗り切り、復興への希望と意欲を抱けるよう、万全な体制を構築するのが行政の務めです。
■ バリアフリーやプライバシー、心のケアに配慮した「避難生活のあるべき姿」を追求します。
災害時の避難生活では、怖い思いをした後に狭い場所で不便な生活を強いられる避難者の心のケアも重要です。いつ起こるかもしれない災害への備えとして、少しでも安心できる避難所を目指す必要があります。
私たちは、地震や水害に遭った全国の被災地から、さまざまなことを学ばなければなりません。また、男性と女性、子どもやお年寄り、障がいや基礎疾患のある人や、医療・介助などに携わる人など、それぞれの立場でのニーズを把握して、ひとつずつ解決を図っていくことも大切です。避難生活の中でも、バリアフリーを取り込み、プライバシーに配慮して、できる限り心を癒すための要素を盛り込めるよう、行政も丁寧に考えていかなければなりません。
ひとまずの安心感を持つことで、生活を立て直す意欲が生まれる。避難所にはそんな機能も求められていると思います。
■ 要支援者避難リストと福祉避難所の整備を進め、誰も取り残さない避難体制を構築します。
要支援者避難リストは、高齢者や障がい者など、災害時の避難にサポートを必要とする方の名簿です。これら災害弱者と呼ばれる方に対するサポートは、移動の手助けだけでなく、いつどこに避難すべきか、避難情報に基づいて判断することも含まれます。避難の前の段階からサポートに入ることが必要です。
リストに名前を載せることについては、健康や身体の状況などのセンシティブな情報を他人に知られてしまうリスクを感じている方もいらっしゃると思います。こうした不安を解消してもらうため、どんな手助けが必要かを考える基礎としてリストの整備が有用となることをより多くの人に理解していただけるよう、啓発に努めます。また、要支援者の方が安心して避難できるよう、バリアフリーなど必要な機能を備えた福祉避難所を用意します。この2つのセーフティネットで、誰も取り残さない避難体制をつくります。
■ 住宅・建物の耐震化や浸水防止、市内に散在する土砂災害危険個所について、安全対策を進めます。
近年は全国的に大きな地震や「50年に一度」の大雨に見舞われることが増えているように思います。地震や大雨に強いまちづくりを進めるに当たり、住宅や建物の耐震化、浸水防止対策は、市民の命を守る直接的な取り組みです。市内には55か所の土砂災害警戒区域が指定されていますが、崖地の崩落防止は近隣住民の安全のほか、避難経路の確保のためにも不可欠です。道路冠水などの浸水被害対策も同様に必要です。
災害に強いまちをつくるため、家屋の耐震化・浸水防止対策に対する助成を進めるほか、崖地の安全対策にも速やかに取り組んでいきます。
□ 台風・大雨による内水氾濫の防止
まちづくり
■ 空き地・空き家対策を推進し、土地や物件の利活用を図ります。
高齢化が進み、管理不全となる空き地や空き家は増える傾向にあります。都市部の空き家に管理が行き渡らなくなると、防犯や衛生面などで周囲の住環境にも悪い影響が及びます。空き地や空き家の利活用は、地域全体の価値にかかわる重要なテーマです。
都市部の利便性が高い場所に生じた空き地や空き家は、緑を守り、人が行き交う空間として、地域活性化と環境保全の両立を目指した活用を考えるべきと思います。ふらっと立ち寄れる憩いの場、サークル活動や地域ボランティア、ピアカウンセリングの場所としても活用できるでしょう。土地建物の所有者と協力して、地域の「お荷物」だった空き地や空き家を地域のにぎわいの拠点に生まれ変わらせるような活用制度を構築していきます。
■ 秩序ある住宅地の形成と都市緑地の保全の両立を図ります。
市内の土地利用に関する基本的なエリア分けに、市街化区域と市街化調整区域があります。市街化調整区域は、農地や緑地などを現状のまま保つエリアで、住宅など建物を建てるには原則として県知事の許可が必要です。
いわゆる「50戸連たん」は、市街化調整区域で宅地開発を行う代表的な方法ですが、これがバラバラに進んでしまうと、市域全体として区画がまちまちとなり、結果的に、住みにくいまちとなるおそれがあります。市川市全体で秩序あるまちづくりを進めるには、市街化区域と市街化調整区域の「線引き」から見直して、住宅と緑地・農地をバランスよく組み合わせることが必要です。
他方、市街化区域の側には、緑がある地区を市が生産緑地に指定し、農地を保全する仕組みがあります。生産緑地は農地並みの課税となり、農地として維持されます。
もともと生産緑地は、1992年に始まった制度で、これに指定されると30年間はそこを農地として利用することが義務づけられました。30年が過ぎた後は自治体に買取りを申し出ることができますが、自治体が買い取らなかったり、農地として他の農家に引き継がれなければ、生産緑地の指定が解除されます。
今年は2022年、生産緑地の指定から30年が経つ最初の年に当たります。買取りの申し出があった土地は、まちづくりの計画に照らして活用を考える必要があります。
東京都に隣接し、利便性が高いという立地条件は、市川市にとって最大のセールスポイントといえます。整然としたまち並みと緑が両立する心地よいまちづくりを進め、市川市の魅力をさらに高め、選ばれるまちにしていきます。
■ 駅前再開発では、まちのデザインを関係者で共有し、最適解を導けるよう注力します。
令和元年8月に策定された本八幡駅北口再開発基本構想は、再開発が完了した地区の道路を挟んで東側を対象としたものです。建物が密集し、道路が狭いこの地区を再編し、防災性を高め、快適でゆとりある空間の充実を図るとしています。
現在はこの基本構想に基づき、地権者、事業者、行政が協働して、街づくりの具体的な計画の検討に入っています。JR、京成、都営地下鉄の3線が入る交通至便の貴重な区域に、市としても市民にとって不可欠な施設を整備したいところです。多様なニーズを受け止め、活気にあふれるまちを目指して、最適解を導き出せるよう注力していきます。
■(仮称)押切橋・大洲橋の早期開通を働きかけ、地域の利便性向上と連携強化を図ります。
行徳駅入口交差点から江戸川区の柴又街道につながる(仮称)押切橋の事業計画がようやく動き出しました。事業期間は2031年度までとされています。
行徳地域と江戸川区を結ぶ旧江戸川の橋は、現在、広尾防災公園の脇にかかる今井橋の1つしかありません。今井橋の上流にある一般道路の橋は国道14号の市川橋、この間の8kmは首都圏の人口集中地区では最長の間隔です。ここに橋がかかることで、対岸へのアクセスが複線となり、今井橋に集中していた交通混雑の緩和や、行徳地域と江戸川区との行き来の活発化も期待できます。1日も早い開通に向けて県に働きかけていきます。
もう1つ、江戸川の架橋が待たれているのが(仮称)大洲橋です。江戸川の架橋は市川市の防災機能の観点からも重要なテーマです。こちらも早期の事業化に向け、県に強く要望していきます。
■ 道路の無電柱化を進め、人にやさしい街並みをつくります。
景観法の施行から20年あまり、景観まちづくりの考え方もかなり一般的になってきたせいか、市川市内も含めて、道路の無電柱化が少しずつ広がってきたように感じます。
無電柱化のメリットは、まちの景観がよくなるだけではありません。道路上の大きな障害物がなくなり、人や車にとって通行の安全性が上がります。バリアフリーの観点からも効果があります。
また、無電柱化は防災の面でも有効です。阪神・淡路大震災では、切れて垂れ下がった電線が火災を引き起こしたほか、救急や消防活動にも支障をきたしたといいます。電線などのケーブルが地下に入ることで、電気や電話などの社会インフラが災害にも強くなります。
安全・安心のまちづくりにとって、無電柱化は大きな効果をもたらします。着実に、その分、市川のまちの魅力は確実に高まります。
□ 地域で偏りのない公園・緑地の整備
■ 市内でお金を循環させ、地域経済の活性化と市の財源安定の両立を図ります。
市民の中には、東京などの市外で働いている方が多くいらっしゃいます。市川市の税収のうち、およそ半分は個人市民税が占めていますから、市の財政の中には、市外から入ってきたお金が結構あると言ってもいいでしょう。
経済では、お金は血液のようなもの。経済を活性化する方法の1つは、動くお金の量を増やすことです。市の税金をできる限り市内で使うようにすれば、経済の活性化につながるだけでなく、その先には市内の事業者から税金として市に戻ってくるという循環があり、市の財政の安定にも貢献することになります。
市内でお金を循環させる施策を通じて、まちの活力を引き出します。
■ Wi-Fiスポット(公衆無線LAN)を市内全域に整備します。
スマートフォンの普及が進み、多くの市民がモバイル端末を使って情報に触れる時代、無線通信環境も重要なインフラの1つです。市川市も市役所、公民館、地域ふれあい館など多くの公共施設に「市川市フリーWi-Fi」を整備してきました。今後さらに整備を加速し、公共施設のみならず市域全体にWi-Fiスポットを広げることが必要です。
市がWi-Fiスポットを整備する大きな理由のひとつは、災害時の情報提供手段を確保することです。無線通信自体はすでに携帯電話会社の各回線が張り巡らされていますが、これまでの大きな災害では、携帯電話やインターネットがつながらないことがしばしば起きています。この時、市のWi-Fiスポットの災害時用の通信回線をあてがえば、避難や被害に関する情報を継続的に提供することができますし、被災者同士の安否確認も安定的に行えます。平時は市からの情報発信ツール、音声案内などバリアフリーの活用が考えられます。
他の通信事業者と連携協力して、まずはすべての市の施設に、さらに人が集まる施設や区域にWi-Fiスポットを順次整備します。
保健・福祉
■ 感染症から市民を守るため、予防接種の費用助成を拡大します。
新型コロナウイルスの感染拡大で、ワクチン接種の重要性が改めて認識されてきたと思います。大きな病気をしないよう、生まれてから数年の間に、子どもは何種類もの予防接種を計画的に行うことになっていますが、母子健康手帳を片手に今度はいつ何のワクチンを、と考えるのもなかなか大変なことです。
市民のいのちを守るため、かかりつけ医をつくり、必要な予防接種をしっかりと受けられるような環境を整える必要があります。とりわけ予防接種は、病気にかかり医師にかかる確率を下げる意味で効果的な手段のひとつです。特に子育て世帯に対しては、法定・任意にかかわらず、予防接種の種類や接種時期、副反応など安全性に関することなど、正しい情報に基づいて適切に接種を受けられるよう、費用助成を含めて家族をしっかりサポートする必要があります。
コロナ禍を経て、私たちは感染症の猛威が社会そのものを機能不全にする危険があることを突きつけられました。日常生活を守るためにも、予防接種がさらに身近なものとなるよう、接種機会を拡大します。
■ 認知症に対する理解を深め、認知症予防を推進します。
高齢社会が進み、加齢とともに増える認知症患者数は、2025年には65歳以上の高齢者の5人に1人に達するといわれています。2025年は団塊の世代が75歳、後期高齢者になり始める時期でもあります。認知症支援と認知症予防はまさに喫緊の課題です。
市川市でも、認知症サポーターの養成や認知症ガイドブックなど、認知症に対する啓発を進めていますが、認知症の予防にも本格的に取り組む必要があります。
年のせい、と自覚しにくいともいわれる認知症、まずは病気なのかどうか、自分自身の状態を知ることが大切です。横浜市やさいたま市、練馬区など「もの忘れ検診」(簡易検査)を無料で実施している自治体もあります。
また、認知症の予防に取り組むことも必要です。適度な運動や栄養バランスの取れた食事、地域活動などの社会参加は、認知症の予防にも一定の効果があるといわれています。フレイル予防に認知症予防の要素も取り込んで、無料検査と予防指導の両面から、高齢者の心身の健康づくりを進めます。
□ 介護予防・フレイル対策の充実強化
□ 生活習慣・栄養指導による基礎体力・免疫力の向上
□ 健康マイレージの普及促進
□ ジェネリック医薬品の普及促進
■ 在宅医療や介護の資源確保に取り組みます。
「老老介護」という言葉があります。高齢化が進み、在宅の介護をする側も高齢者だという状況です。特養ホームやグループホーム整備が需要に追いつかず、介護の負担が家族に大きくのしかかっています。在宅介護の環境改善は喫緊の課題です。
在宅介護を充実させるには、介護人材の確保が不可欠です。介護ロボットなどICTの活用も一つの手段ですが、その人にあった介護メニューを組み立てるにはやはり人のチカラが必要です。国も介護人材の処遇改善を進めていますが、生計を立てる職業としては他の産業に大きく後れをとっている状況です。特に福祉を志す若い人にとって、介護のしごとを経済的にも魅力あるものにしなければなりません。
介護関係の資格取得に向けた助成のほか、介護職員に直接行き渡る人件費補助を市独自で上乗せ制度など、介護する側、される側の双方が安心できる体制を目指します。
■ 地域包括ケアシステムを発展させ、地域に重層的な相談支援体制を構築します。
市内には現在、15か所の高齢者サポートセンター(地域包括支援センター)があります。高齢者の介護予防や市が実施する介護サービス、権利擁護などさまざまな相談を受けています。地域包括ケアシステムは在宅医療の推進や医療と介護の連携促進を目的とするもので、市川市でも徐々に整備が進んできています。
一方、地域にはさまざまな世代や境遇にある方が暮らしています。子育てに関すること、障がいに関すること、生活困窮に関することなど、悩みごともさまざま。これらが複合的に生じていることも少なくありません。
重層的な相談支援体制は、こうしたさまざまな悩みに対し、時には個別に、時には連携して相談に応じ、解決を図ろうとする仕組みです。令和2年の改正社会福祉法は、「地域共生社会」の実現を図るため、分野横断的な相談体制の整備を進めることを自治体に投げかけています。身近なところにワンストップで対応できる相談窓口の整備を進め、地域で暮らしていくための安心感につなげていきます。
■ シルバーパスを導入し、お年寄りの外出をサポートします。
お年寄りが外に出て活動するには、公共交通機関を利用しやすくすることも重要です。自宅近くから駅や公共施設、買い物や病院などに出かけるのに身近な存在のひとつはバスですが、乗る人が少なければ運行本数が減り、それが利用者離れを加速させるという悪循環に陥りがちです。
そこで、検討を進めたいのがオンデマンド交通です。シルバーパスを導入して経済的な負担を軽くすることと合わせて、お年寄りの外出を支え、コミュニティバスと合わせ、地域の交通ネットワークを確保、地域の活力の基盤を整えます。
■ 障がい者・高齢者等の就労を支援し、自己実現と社会参加を後押しします。
東京パラリンピック2020では、様々な障がいをもつパラアスリートたちが躍動していました。今年の北京冬季パラリンピックでも、選手たちの努力の成果が存分に披露されるはずです。中でも、競技を終えた後の選手たちが、抱えている障がいを共に乗り越え、たたえ合う姿はとてもまぶしく映ります。自己実現とは、生きがいをもって日々を過ごしていくことそのものなのだと改めて感じます。
世界は今、インクルーシブ(包摂)に向けてかじを切っています。障がい者や高齢者に対する就労支援は、1人ひとりの生きがいを大切にする取り組みです。それには周囲の人たちの意識の変革も求められます。インクルーシブ社会の実現に取り組む事業者を応援し、チャレンジする障がい者・高齢者の自己実現を支えます。
□ 市内教育機関と連携した学び直しの場の提供
□ 世代を越えて交流できる地域拠点の整備
こども・教育
■「幼保・小・中」をクロスフェード化する取り組みを進め、ギャップの解消に努めます。
小中一貫教育への取り組みが全国で進められています。文部科学省の実態調査では、子どもたちの不安が解消され、学習や生活態度が好転したといった「中1ギャップ」を低減する効果が認められたとされています。
市川市では塩浜学園が義務教育学校として小中一貫教育をスタートさせました。今後さらに小中一貫校を増やしていくのに必要なのは、小・中学校の先生方が協力しやすい体制を整えることです。塩浜学園の経験に基づき、教育委員会が学校現場をしっかりサポートする仕組みを構築し、小中のギャップ解消に取り組みます。
子どもや親が直面する「ギャップ」は、幼稚園・保育園と小学校との間にもあります。ここにも、幼保・小の先生方の相互協力・連携が必要となるでしょう。ギャップの原因を究明し、解消策を模索しながら、切れ目のない体制整備を目指します。
■ 駅前などに、親子で交流を深められる「子育てステーション」を設置します。
子育て世代は同時に働く世代でもあります。仕事と子育てを両立する彼らのライフサイクルに着目すると、保育園や子育て支援施設は駅前からアプローチできるのが便利です。子育て世代が多く転入する流山市では、主要駅に送迎保育ステーションを設置し、自宅から遠い保育園への送迎でも保護者の負担を軽くする施策を行っています。
若い両親にとって、子育てには不安がつきものです。送迎ステーションにちょっとした相談に応じる窓口や、利用する親子が交流できる機能をつければ、親子、親同士、子ども同士のネットワークが生まれます。さらに、近所のお年寄りなど、子育ての「先輩」が遊びを教えに来たり、経験を踏まえてアドバイスをしたりと、子育てを通じた地域の人のつながりに育つ可能性もあるでしょう。
親子が気軽に集えるこうした「子育てステーション」を駅前など利便性のよい場所に設置し、地域のさまざまな人たちが気軽に立ち寄れる空間を作ることで、地域ぐるみの子育て支援を実現します。
□ 子育てを終えた地域のお母さんたちがピアカウンセリング
□ 妊娠から卒業まで切れ目のない「子育てまるっと相談支援」
□ 妊産婦・乳幼児支援(検診、栄養指導、育児訪問指導など)
□ お父さんの育児参加をバックアップ、ジェンダーフリーの子育てを推進
■ いじめや不登校など、子どもたちの悩みに向き合う相談窓口の充実を図ります。
いじめ防止対策推進法が制定、公布されてから10年近くになりますが、小中学生を対象とした国の調査では、約9割がいじめの被害・加害の少なくともいずれかを経験しているとされています。この状況は法の制定前後でもほぼ変化はなく、いじめ対策が進んだため、むしろ認知件数が増えたという話も聞こえてきます。
相談をするということは、最初はとても勇気がいることだと思います。SNSの活用など、気軽に相談できる環境の整備は一定の効果はあるものの、その後ろに「相談すれば助けてくれる」という信頼の裏付けがないと、むしろ相談する前よりも落胆と絶望に襲われることも考えられます。
相談窓口の充実は、この信頼の裏付けを確固たるものにすることです。そのためには、相談を受ける側がまず人権の尊重や多様性に関する理解を深め、小さなサインを見逃さないようスキルを磨き続けることが肝要です。学校など教育の場で、子どもたちに「個性」や「違い」を認め合う大切さを伝えることとあわせて、いじめは決して許さないという姿勢を行政がもっと明らかにすることが求められます。
■ GIGAスクールの取り組みを進め、これからの教育のあるべき姿を模索します。
GIGAスクールとは、タブレット端末、高速ネットワーク、クラウドを活用して、未来を担う子どもたちを育てる取り組みです。市川市も「いちかわGIGAスクール構想」に基づき、一人一台端末のメリットを生かした学習手法に創意工夫を凝らしています。
留意すべきは、ICTはあくまでも手段であり、これらの特徴を生かして教育効果を高めることがGIGAスクールの本当の目的だということです。また、オンライン教育は便利な反面、視力など健康面への影響だけでなく、集中力の持続や記憶の定着など課題も見えてきています。鋭意取り組みを進めるのと同時に、効果や課題などの検証を丁寧に行い、GIGAスクールが子どもたちの将来を明るく照らすものにまで高めていきます。
□ 食べ物を大切する心を育む食育の推進
市内には現在、15か所の高齢者サポートセンター(地域包括支援センター)があります。高齢者の介護予防や市が実施する介護サービス、権利擁護などさまざまな相談を受けています。地域包括ケアシステムは在宅医療の推進や医療と介護の連携促進を目的とするもので、市川市でも徐々に整備が進んできています。
一方、地域にはさまざまな世代や境遇にある方が暮らしています。子育てに関すること、障がいに関すること、生活困窮に関することなど、悩みごともさまざま。これらが複合的に生じていることも少なくありません。
重層的な相談支援体制は、こうしたさまざまな悩みに対し、時には個別に、時には連携して相談に応じ、解決を図ろうとする仕組みです。令和2年の改正社会福祉法は、「地域共生社会」の実現を図るため、分野横断的な相談体制の整備を進めることを自治体に投げかけています。身近なところにワンストップで対応できる相談窓口の整備を進め、地域で暮らしていくための安心感につなげていきます。
■ 通学路の安全を確保し、交通事故から子供たちを守ります。
令和2年6月に八街市で起こった、通学路を下校中の小学生を襲った死傷事故。2人の尊い命が奪われた痛ましい事態を受けて、市川市でも通学路の緊急一斉点検が行われています。危険個所と指摘された内容には、道幅が狭い、車ないし自転車の交通量が多い、歩道が狭い(ない)、といった、道路の構造上の問題に起因するものも多くみられます。
ところが、道路を広げるのはなかなか難しいです。ならば、路上にある物をどかして歩道を設けることを考えるべきです。送電線などのケーブルを地下に入れる無電柱化は景観と安全に優れた方法です。また、生活道路における車や自転車の速度を落とす方法としてハンプの設置も積極的に考えるべきでしょう。その他、交通規制や信号機等の設置も含め、関係機関とも連携して、通学路の安全をできるだけ高いレベルで確保できるよう、優先的に取り組みます。
■ 放課後保育クラブの量と質を確保し、地域で子どもを育てます。
幼稚園・保育園と小学校との間にあるといわれる「小1の壁」。夏休み、授業や宿題、学校行事など、これまでと環境が変わり、親にとっては育児と仕事の両立を厳しいと感じやすい時期です。
放課後保育クラブは幼保と学校をスムーズにつないで働く親をサポートするための施設ですが、単にお迎えがくるまでの時間を過ごすだけではない、保育園とは少し違った「質」が問われていると考えます。
低学年の子どもの場合、まずは安全の確保が必要です。学校内あるいは学校との併設であれば理想的です。学年が上がるにつれ、宿題をやる、勉強を教えるといった学習面のフォローも少しずつ求められてきます。子供の成長に合わせて、他者との共存や認め合う心を養うトレーニングの場としての役割もあります。こうした経験を地域で積むことで、自分も地域の一員だという気持ちが醸成されてくるとも思います。
教師のOBや大学生など、学校以外の地域の力で子どもの成長をサポートしていく仕組みをつくることで、放課後保育クラブは社会のミニチュアに近づきます。子どもたちはそこで地域のつながりに触れ、上級生が下級生を思いやる気持ちを育んでいく。大人の目がゆるやかにある中で、学童保育を拠点として、近所に住む大きな子と小さな子が一緒に遊んでいたような子どもたちの世界を構築します。
□ 家庭における仕事と子育ての両立支援(ベビーシッター・家事支援・病児保育など)
□ ひとり親家庭・生活困窮家庭向け学習支援
□ 発達に課題のある子どもと家庭への支援
□ 不妊・不育治療への支援強化
□ こどもの体力向上
□ 児童虐待・DV対策の強化
□ 医療的ケア児(重度心身障がい児)への支援強化(幼保学での受け入れ拡大)
■ LGBTQ、ダイバーシティなど、相互理解の基となる人権教育を推進します。
ダイバーシティは「多様性」という意味です。お互いの違いを受け入れ、認め合うことは、人と人とがつながる第一歩です。
市川市は平成4年2月から、パートナーシップ・ファミリーシップ届出制度をはじめました。性自認、性的指向の分野でのこうした取り組みは、性に関する多様性を行政として受け入れるひとつの形といえます。
私は、多様性を認めることは、バリア(障壁)に対する気づきと同じ根をもっていると思います。自分と違う相手の立場に立って考えることで、これまで気づかなかったバリアに気づくことができるからです。これは人権思想そのものです。
国籍、年齢、障がい、さまざまな違いを認め合うことが、地域のつながりでお互いに支え合う共生社会の実現につながります。そのための人権教育を推進し、人類普遍の価値を未来につなげていきます。
□ インクルーシブ教育システムの構築に着手
環境
■ 3Rと分別の意識を高め、ごみの発生抑制と資源化率の向上を図ります。
市川市のごみの資源化率は令和2年度で18.4%。過去5年間はほほ横ばいの傾向にあります。ごみの総排出量はゆるやかな減少傾向にありましたが、令和2年度はコロナ禍の影響で家庭ごみが若干増加しています。
市川市は自前で最終処分場をもっていません。クリーンセンターで焼却処分した残りの灰は、他の自治体の処分場に埋め立てていますが、だんだん余裕がなくなってきています。燃やした後の灰を減らす、つまり燃やすごみの中から資源化できるものを抜き取って、燃やす量を減らすことが必要です。例えば、「雑がみ」です。新聞紙や段ボールなど、資源回収でおなじみの紙以外の紙のことで、燃やすごみのうちの3割はこの雑がみだといわれています。このうちの一部でも資源化できれば、頭打ちだった資源化率をもう一段上げることができそうです。やはりごみを出す市民の一人ひとりが分別を意識することが不可欠です。
3Rは「リデュース(減らす)」「リユース(繰り返し使う)」「リサイクル(再資源化)」のことで、ごみの処分量を減らすにはこの順番で取り組むのが効率的とされています。まずはごみ自体を出さないようにすること、出す時にはできるだけきちんと分別すること。ごみの問題を市民みんなの問題として共有できるよう、啓発に努めます。
□ クリーンセンター建てかえに合わせた資源化施設の充実
■ 身近な自然を守り、ふるさとへの愛着を育てます。
市川市は、北部は下総台地の丘陵地帯、南部の海では三番瀬を臨みます。東京のベッドタウンとして開発が進んだ市川市ですが、南部には貴重な干潟があり、北部にも台地のへりから染み出る湧き水を中心に、里山の風景がなお点在しています。
市川市の南北に残る貴重な自然には共通点があります。それは、古くから人の暮らしと深いかかわりを持っていたという点です。人の生活と隣り合わせにある市川市の自然は、市川市で暮らしてきた人たちの歴史を映すものでもあります。
だとすれば、市川での自然環境の保全は、人とのかかわりの中でそれを進めていくべきです。市内に残された自然を単に守るということではなく、市民の方が直接触れることができ、その中から市川市の歴史を感じ取れるような形で保全をすることで、わが街を誇りに思う気持ちも醸成されてくるのではないでしょうか。
身近な自然を人に身近な形で守ることで、ふるさとの歴史を伝え、ふるさとへの愛着を育てていきたいと思います。
□ 生物多様性に関する市民理解の深化
□ 家庭で取り組む「ちょこっと菜園」「ちょこっと緑地」の推進
□ 再生可能エネルギーの導入促進
■ ペットと飼い主のよい関係。殺処分ゼロと飼育マナー向上に努めます。
家族の一員として迎えられ、飼い主と穏やかな毎日を過ごすペットがいる一方、大きくなって手に余る、増えてしまって手に負えなくなったなど、心ない飼い主によって捨てられたり、処分されるペットもいます。
ペットを飼おうとする人には、何をおいても命の大切さを知ってほしい。飼い主になったらそれを実感してほしい。そして、最期まで責任をもって世話をしてほしい。
ペットを飼うことはその命を預かることをしっかり理解していただくよう、保健所やペットショップなどと連携して、飼い方やしつけ、不妊手術といった飼い主としてのマナーと責任について啓発を進めます。やむを得ず手放す場合でも、譲渡会や里親募集などを利用して、殺処分を避けられるよう、関係者と協力してペットのセーフティネットを整備します。
文化・スポーツ
■ 赤ちゃんから障がい者まで、バリアフリーの文化・芸術イベントを増やします。
音楽や美術といった文化芸術に向き合う時に、言葉や知識はいりません。コンサートや展覧会で作品を前にして心を揺さぶられた経験は誰もが持っていると思います。スポーツもそうですが、見る者聞く人に直接響くのが、文化芸術活動のよいところです。
「本物」の作品が宿すそんな力を、みんなで分かち合ってみてはどうでしょう。○○○の方向け、からもう一歩進んで、大人も子どもも、健常者も障がい者も、みんな一緒に「本物」に触れてみるのです。演じる人や作品からだけでなく、鑑賞している側の人たちからも、きっと何かを感じるはずです。
文化や芸術は、社会の中で生きるさまざまな立場の人たちを丸ごと包み込み、そこにいる人の心を動かすことができると思います。文化や芸術がなしうる、本来のバリアフリーです。あらゆる人が平等に楽しめるバリアフリーの文化・芸術イベントを増やして、共生社会、包摂(インクルーシブ)社会の実現に向けた機運を醸成していければと思います。
□ 美術館の建設
■ 史跡や伝統行事など、市川がもつ有形無形の地域資源を守り、発信します。
市川市には、古くから人が築いてきた長い歴史があります。曽谷などにある貝塚、国府台周辺はかつての下総国の国府が置かれていました。源頼朝が鎌倉に入る際の通り道でしたし、中世の古戦場や城跡、近世の賑わいを彷彿とさせる行徳街道など、時代ごとの人の営みが史跡や行事として今も受け継がれています。そのどれもが、市川が誇る地域資源です。
土地に対する愛着は、その土地の歴史をひもとき、現在まで歩んできた道を知ることで、人々の心に宿るのだと思います。史跡や伝統行事などに関する積極的な情報発信を通じて、市川という地域に親しみを持ち、愛してもらえるよう、地域資源を活用していきます。
□ 市民の創作活動をサポートする文化講座、発表の場の充実
□ 新進アーティストの活動拠点となるアートラボ・アートセンターの設置
■ プロスポーツを誘致、子どもたちに夢を、まちに賑わいと活力を。
野球、サッカー、バスケットボール、バレーボールなど、様々なスポーツでプロリーグが結成されています。特徴的なのは、いずれも選手と地域の人たちとが積極的に交流し、地域密着型で運営されていることです。
地元のチームを応援するという1本の軸が、人を呼び、地域経済に活力を生み出します。特に子どもたちにとっては、夢とあこがれの対象にもなるでしょう。
子どもたちに夢を与えてくれるプロスポーツを市川に誘致して、地域の活性化を図ります。
■ スケートボードパークやパラスポーツの専用施設など、多様性に基づくスポーツ環境の整備に取り組みます。
東京オリンピック・パラリンピック2020は、コロナ禍の中で開催自体が議論を呼びましたが、アスリート、パラアスリートが躍動するさまは見る人に感動を与えました。特に新たに競技種目となったスケートボードや、ボッチャや車いすバスケ、ゴールボールなどのパラスポーツなどは、スポーツの世界がとても身近で開かれていて、誰でも楽しめるものであることを再認識させてくれました。
さまざまな境遇にある人たちがそれぞれできるスポーツを楽しんでいる姿は、社会の多様性をそのまま表していると思います。これまで打ち込む場所がなかった種目のための施設を設けるほか、既存の体育館で一定の日をパラスポーツデーにするなど、工夫を凝らしながら、誰でもいつでもスポーツにチャレンジできる環境を整えていきます。